乾くるみを読む1 『イニシエーション・ラブ』 アインシュタインの世界

小説『イニシエーション・ラブ』2004年 乾くるみ著 文春文庫 2007年4月10日第1刷 2012年5月10日第36刷
2015年6月7日(日)読了

(注意!)以下の文章において小説および映画の『イニシエーション・ラブ』のネタバレ、オチバレしています。未読の方、未見の方は絶対に読まないでください。

映画が面白かったので原作小説を読んでみた。
よく出来ている、面白いとは思うが、やはり映画を見た後では衝撃度は薄い。それは如何ともしがたい。
映画は、基本的なストーリーにおいてかなり原作に忠実だったことが分かる。ただ、映画は随所に堤幸彦らしい外連味があり、それが珍しくプラスになって面白くなっている。原作小説は案外地味である。
映画で一番目を惹く鈴木の体型や顔への言及は小説では特に強調されていない。
小説は、side-A、side-Bともに鈴木の一人称で語られていく。そこにこの小説のトリックがあるわけだが、ネタを知っていて読んでもアラは感じられず、スンナリ読めてしまう。この鈴木が、AとB、別人だとは思わないし、時間的にも一部分が重なっているとは思わない。そこが上手い。
Aにおいて、鈴木が初めて繭子とセックスするシーンがやけに克明に描かれているのは、さすがに映画ではできなかったところ。ここは、繭子を映画で演じた前田敦子の顔を思い浮かべながら読むとなかなかイイ。

最後の種明かしの部分、映画はずいぶん親切だったんだなあ、と分かる。ちゃんと映像でポイントをリピートして見せてくれるし、何よりも二人の鈴木を対面させている。ここまでやらないと映画の観客は分からないという風に作り手は思っているのか。
小説は、最後の1ページで鈴木が繭子とのことを回想する。それがAで描かれたこととまるで違うことが示され、最後の二行で鈴木の下の名前が初めて明らかになる。そこでオシマイ。余分な説明など一切なし。素っ気ない。だが、小説だとこれでも成立してしまう。そこが映画と違うところ。確かに「二回読みたくなる」小説ではある。

80年代を舞台にしたのも一つのトリックというか目眩ましかもしれない。ノスタルジックな恋愛小説と見せかけて、実は・・・、という企みが感じられる。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
文藝春秋
2012-09-20
乾 くるみ

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