北野武を見る1 『龍三と七人の子分たち』 馬鹿は死ななきゃ治らない
映画『龍三と七人の子分たち』監督・脚本・編集:北野武 出演:藤竜也 中尾彬 近藤正臣 品川徹 勝村政信
2015年4月25日(土)公開
2016年5月6日(水)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン8 15時30分の回 座席B-6 入場料(当日券)1800円
場内満席。公開から10日以上経っているのにこの盛況。今までとかく「客が入らない」と言われ続けてきた北野武の映画もどうやらこの前の『アウトレイジ』2部作で娯楽映画と認知されたようである。まずはめでたいことである。ただ、この娯楽映画なるもの、一筋縄じゃいかないところがいかにも北野武らしい。
今回の作品は、謂わば「やくざコント集」という趣がある。一本の映画として見ると非常にルーズな作りで実にバランスが悪い。一応、筋立てはできているのだが、それはあくまでもコントをやるためのものというに過ぎない。
北野武が、今のテレビじゃ作れないやくざコントをやってみたくて作りました、という感じ。
冒頭で元やくざの父親(藤竜也)と息子(勝村政信)が、父親の詰めた指の話をするところから声を出して笑ってしまった。
「子どものころから爪を噛む癖があったから指がなくなったとか孫に言わないでくれるかなあ。」
たしかにこれ、今のテレビじゃ無理だ。
それ以降、とにかくやくざ絡みの色んなギャグを盛り込んで見せる。残念ながら全部が全部面白いわけではないが、不発ギャグを含めてとにかく連発することに意義がある。
一応話としては、藤竜也演じる龍三を始めとする元やくざの老人たち8人が、やくざではないがやくざまがいの極悪なシノギをやっている若い集団と戦う話となっている。ただ、別に龍三たちは正義に目覚めたわけでもなんでもない。勧善懲悪とはほど遠い。昔みたいに馬鹿なことがやれるチャンスが訪れたのでそれに乗っかっているだけ。やることは若い奴らと五十歩百歩、実にしょうもないことの繰り返し。それを笑いに転化してみせているが、現実にこんな奴らがいたら面倒くさいことこの上ない。
北野武映画に切れ味の良さとか洗練さなど求めても仕方ない。今回も実に泥臭く、暗く、陰惨で、それでいてどこかスコーンと底が抜けて笑えてしまう映画になっている。
コメディではあるけれど、所謂「お笑い芸人」とか「コメディアン」(今の日本にゃいないか)を使わず、普通の俳優にコメディをやらせている。特にコメディらしい演技ではなく、真面目に演技させて、それが可笑しいという風に作っている。主演の藤竜也はよくその辺を分かっていて好演している。女装したりパンツ一丁になったり、その献身さには頭が下がる。
ただ藤竜也絡みで言えば、彼が度々おならをするっていうのはまったく笑えない。こういうこと何でやるかなあ。
品川徹が仁義を切るシーンで若いものがことごとく突っ込みを入れるところは、漫才そのものと言っていいのだが、これが見事にハズレである。北野武が、ビートたけしにやらせたらもっとさまになったんじゃないか。
クライマックスは、自動車をバスで追っかけるカー・アクションシーン。これが緩い。緩くてもコメディだと許せてしまう。ま、日本映画じゃこんなものか。ハリウッドに比べれば雲泥の差だが、頑張っている方か。
今の日本でとにかくも笑える映画を作ろうという人はあまり見当たらないのであんまり悪口を言いたくない。
傑作です。楽しめました。
2015年4月25日(土)公開
2016年5月6日(水)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン8 15時30分の回 座席B-6 入場料(当日券)1800円
場内満席。公開から10日以上経っているのにこの盛況。今までとかく「客が入らない」と言われ続けてきた北野武の映画もどうやらこの前の『アウトレイジ』2部作で娯楽映画と認知されたようである。まずはめでたいことである。ただ、この娯楽映画なるもの、一筋縄じゃいかないところがいかにも北野武らしい。
今回の作品は、謂わば「やくざコント集」という趣がある。一本の映画として見ると非常にルーズな作りで実にバランスが悪い。一応、筋立てはできているのだが、それはあくまでもコントをやるためのものというに過ぎない。
北野武が、今のテレビじゃ作れないやくざコントをやってみたくて作りました、という感じ。
冒頭で元やくざの父親(藤竜也)と息子(勝村政信)が、父親の詰めた指の話をするところから声を出して笑ってしまった。
「子どものころから爪を噛む癖があったから指がなくなったとか孫に言わないでくれるかなあ。」
たしかにこれ、今のテレビじゃ無理だ。
それ以降、とにかくやくざ絡みの色んなギャグを盛り込んで見せる。残念ながら全部が全部面白いわけではないが、不発ギャグを含めてとにかく連発することに意義がある。
一応話としては、藤竜也演じる龍三を始めとする元やくざの老人たち8人が、やくざではないがやくざまがいの極悪なシノギをやっている若い集団と戦う話となっている。ただ、別に龍三たちは正義に目覚めたわけでもなんでもない。勧善懲悪とはほど遠い。昔みたいに馬鹿なことがやれるチャンスが訪れたのでそれに乗っかっているだけ。やることは若い奴らと五十歩百歩、実にしょうもないことの繰り返し。それを笑いに転化してみせているが、現実にこんな奴らがいたら面倒くさいことこの上ない。
北野武映画に切れ味の良さとか洗練さなど求めても仕方ない。今回も実に泥臭く、暗く、陰惨で、それでいてどこかスコーンと底が抜けて笑えてしまう映画になっている。
コメディではあるけれど、所謂「お笑い芸人」とか「コメディアン」(今の日本にゃいないか)を使わず、普通の俳優にコメディをやらせている。特にコメディらしい演技ではなく、真面目に演技させて、それが可笑しいという風に作っている。主演の藤竜也はよくその辺を分かっていて好演している。女装したりパンツ一丁になったり、その献身さには頭が下がる。
ただ藤竜也絡みで言えば、彼が度々おならをするっていうのはまったく笑えない。こういうこと何でやるかなあ。
品川徹が仁義を切るシーンで若いものがことごとく突っ込みを入れるところは、漫才そのものと言っていいのだが、これが見事にハズレである。北野武が、ビートたけしにやらせたらもっとさまになったんじゃないか。
クライマックスは、自動車をバスで追っかけるカー・アクションシーン。これが緩い。緩くてもコメディだと許せてしまう。ま、日本映画じゃこんなものか。ハリウッドに比べれば雲泥の差だが、頑張っている方か。
今の日本でとにかくも笑える映画を作ろうという人はあまり見当たらないのであんまり悪口を言いたくない。
傑作です。楽しめました。


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