「ジェラルドのゲーム」 手錠に繋がれて

小説「ジェラルドのゲーム」GERALD’S GAME 1992年 アメリカ スティーヴン・キング著 二宮馨訳 文藝春秋 1997年10月1日第1刷
2011年5月4日(水)読了

SMプレイ好きの夫ジェラルドによって両手に手錠をかけられてベッドに繋がれた妻ジェシーは、抵抗した際に夫の股間を蹴飛ばしてしまう。そのショックによるものか、夫は昏倒し、そのまま死んでしまう。場所は人里離れた別荘。ひとり取り残されたジェシーは、この状況からどうやって脱出するのか。

非常にシンプルなアイデアの作品で、普通の作家ならおそらく短編として仕上げるのが関の山だろう。スティーヴン・キングは普通じゃないのでなんと訳書でハードカバー二段組み340ページの長編になっている。例によって物に憑かれたような熱い筆致でとにかく押して押して押しまくり、読む者をひたすら圧倒する。
何しろ、冒頭でジェラルドが早々と死んでしまうのでそれ以降は、登場人物はほとんどジェシーひとりでしかも手錠に繋がれている状態なので行動も極めて限定されている。地味な展開になりがちだが、キングは様々なテクニックを駆使して実に面白い話に仕上げている。
ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」ばりにジェシーの「意識の流れ」を徹底的に描くことに執着しているし、さらに何人かの第三者の「声」とジェシーとを対話されている。勿論、この第三者というのは、ジェシーの心が生み出したものなのだが、単なるモノローグだけでは単調になるのを救っている。
さらに1963年7月20日午後の日食のときに起きた出来事も並行して描かれる。これは、ジェシーが体験したおぞましい性的虐待の話であり、始めは現在進行形の話とのつながりが分からない。クライマックスにいたって何故この出来事がことさら執拗に描かれているのかが明かされ、あっと驚く仕組みになっている。あざといと言えばあざといが実に上手い。

監禁ものとしては「ミザリー」、犬がらみのものとしては「クージョ」というキングの過去作を思い起こさせるが、決して二番煎じと言わせない工夫とパワーがある。
キングとは関係ないが、手錠繋がれて監禁されるというシチュエーションでは、映画「ソウ」も思いだした。作られたのは「ソウ」の方があとなので、この小説の影響を受けているような気がする。特に脱出方法が。

レイモンド・アンドルー・ジューバートのエピソードはどうにも取ってつけたようで蛇足にしか思えなかった。一件落着の後でだらだら続くのでうんざりした。

この本の帯のキャッチコピーの文章がひどいネタばれ、いやオチばれなので呆れた。
ジェラルドのゲーム
文藝春秋
スティーヴン キング

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