『エスター』 私はあなたのママじゃない

映画(DVD)『エスター』ORPHAN 2009年 アメリカ ワーナー・ブラザース映画配給 ダーク・キャッスル製作 監督:ジャウム・コレット=セラ 製作:ジョエル・シルバー レオナルド・ディカプリオ 出演:ベラ・ファーミガ ピーター・サースガード イザベル・ファーマン 上映時間2時間3分 日本語字幕スーパー版
2019年7月31日(水)鑑賞

(注意!)ネタバレあり

例によって予備知識ほとんどなく観始めてかなり早い段階で、この作品が『悪い種子』や『聖ロザリンド』みたいな「恐るべき子ども」を描いたジャンルの作品だと気づく。いわゆる倫理観みたいなものを持たず、善悪の区別がつかず、何の抵抗もなく他人を殺すことができる子どもが主人公で「子どもは純粋無垢である」という考え方の逆を行ってみたもの。

二人の子どもを持つケイト(ベラ・ファーミガ)とジョン(ピーター・サースガード)のコールマン夫妻は、新たに孤児院から一人の少女を養子として家族に向かい入れる。だが、その少女エスター(イザベラ・ファーマン)は恐るべき性格の持ち主で、さらにある秘密を隠していた。
エスターの傍若無人な言動に疑問を抱いたケイトはエスターの素性を知りたくて彼女がいた孤児院のシスターに過去を調べるように頼むのだが・・・。
かなり早い段階からエスターの異常性を小出しにして見せていて、興味を掻き立てる。美人だが9歳の女の子にしては大人びた態度を見せる。そこに何か曰く言い難いものを感じさせる。自分の悪口を言った少女を遊具の上から突き落とす、傷ついた小鳥を「楽にしてやるために」速攻で殺してしまう。さらには、自分の過去を探ろうとしたシスターも殺してしまう。
エスターに疑いを抱いていたケイトはエスターの罠に嵌まっていく。

エスターが、躊躇なくシスターを殺す下りからサスペンスが盛り上がる。エスターを演じるイザベラ・ファーマンの好演も光るが、母親ケイト役のベラ・ファーミガが素晴らしい。『死霊館』シリーズでロレイン・ウォーレンを演じていた彼女だが、あれとは全く違う役柄を巧みに演じている。単に恐怖におびえる母親というだけでなく、過去にアルコール依存症になったという負い目も持っている女性であり、子どもを死産したこともある。だからエスターに対しても強く出られない部分もあり、また夫に信じて貰えないところもある。そんな複雑な女性をリアルに表現している。

(警告!)最重要なネタバレあり

エスターの過去を調べていたケイトはやがて外国にある施設にエスターがいたことを突き止め、その施設に電話するのだが、相手は「ここは孤児院じゃありません。精神病院です」と衝撃的な答え。さらに施設の医師によって明かされる驚愕の真相。実は、エスターは過去に何人もの人間を殺して精神病院に収容された33歳の女だったのだ。その肉体は特殊な病気のための発育不良で大人ではなく子どものようである。彼女は、精神病院を脱走し、辿り着いたのはアメリカの孤児院。そこでは33歳の女ではなく9歳の少女に成りすましていたのだ。
「ああ、よくある、子どもが殺人鬼のスリラーね」と多寡をくくっていたぼくみたいな映画ファンに見事に背負い投げを食らわせる渾身の一撃。一回しか使えない離れ業だ。してやられた、夢にも思わなかった。
このアイディアだけでも傑作と呼べる。エスター【Blu-ray】 [ ヴェラ・ファーミガ ] - 楽天ブックス
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