『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』&『美と共同体と東大闘争』 赤ちゃんは無言の論客!

映画(ドキュメンタリー)『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』2020年 日本映画 配給:ギャガ 監督:豊島圭介 出演:三島由紀夫 芥正彦 内田樹 小川邦雄 小熊英二 木村修 椎根和 篠原裕 清水寛 瀬戸内寂聴 橋爪大三郎 原昭弘 平野啓一郎 宮澤章友 ナビゲーター:東出昌大 上映時間108分 2020年3月20日(金)公開
2020年6月6日(土)鑑賞 TOHOシネマズ日比谷 スクリーン2 9時25分の回 座席A列ー12番 入場料(シニア割引き)1200円 パンフレット820円

本『美と共同体と東大闘争』著者:三島由紀夫・東大全共闘 角川文庫 平成12年7月25日初版発行 令和2年4月5日15版発行
2020年6月10日(水)読了

新型コロナウィルス感染予防のための営業自粛が解除され、6月5日から営業再開になったTOHOシネマズ日比谷に翌日の6月6日に勇んで観に行った。シネコンおよび映画館で映画を観るのは、3月20日に観た『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』以来のこと。2ヶ月半ぶり。久々のシネコンでの映画鑑賞はまさに感慨無量である。幕間のPR映像に出る山崎紘菜も今まで以上に美しく輝いていた。

さて、そんな気分上々で観たのはドキュメンタリー映画だ。51年前、1969年に行われた伝説の三島由紀夫VS東大全共闘の討論会を題材にした作品。その討論会をリアルタイムに撮影した当時の映像とその時の当事者たち(全共闘、三島主宰の盾の会のメンバーなど)が振り返りインタビューに答える今の映像が交互に映し出され、さらに評論家や作家などが解説してくれる映像も加わっている。まことに親切設計と言おうか、こうでもしないと半世紀の時の壁は強固で越えがたいと言うか。
ぼく自身は、1969年というとまだ小学6年生だったのでここに出て来る全共闘の皆さんとは一世代違うので全く相容れない感じ。理解も共感もできない存在。この映画を観て、幾分かは理解できるかと思ったのだがどうもそういう映画じゃないのだった。
ごく単純に右の三島由紀夫と左の東大全共闘が激論を戦わせる過激なものがみられるのかと思いきや、討論のテーマは時間だったり他者だったりして凄く観念的で難しい。東大闘争についてもっと具体的な喧々諤々があると期待していたのだが。
唯一、興味深かったのが天皇について三島由紀夫が語ること。今の保守の人々が語る天皇観とはおよそ異質で非常に面白い。ただ、映画ではそこがあまり出てこなかったので本を買って読んでみると、こんなくだりが。

「古事記の天皇というのは兄弟が平気で殺し合うし、父母をちっとも尊敬していない。それから不道徳のかぎりを尽されている天皇もあるわけだ」(『美と共同体と東大闘争』90ページより引用)

「私は陛下が万葉集時代の陛下のような自由なフリー・セックスの陛下であってほしいと思っている」(同92ページ ちなみに映画ではこの二つのくだりはカット)

この『美と共同体と東大闘争』はこの討論会を活字で起こしたもので、今指摘したように映画では割愛された箇所も収められている。映画を補完するには良いテキストである。だが、だからと言って難しい討論がより分かりやすくなったわけではない。面白さも映画の方が断然上だ。
映画と本の違いを指摘すると、まず映画では実名が出た全共闘の発言者たちが本では、AとかBとかCとか匿名。冒頭で三島由紀夫が気違いを連呼するくだりを中略にしている。そして、最も大きいのは本では発言しか書いていない。本だけ読んだ人はまさかこの討論会に赤ちゃんが登壇していたことを知る由もない。赤ちゃんは発言しないから。
発言を活字で読むこととその同じ発言を映像の中の肉声として聞くことの大きな違い。これに関しては圧倒的に映画の勝利である。
生きている人間が喋ることの強み。しかもそれが百戦錬磨の三島由紀夫であり、一癖ある全共闘の人々である。みんなキャラが立っている。全共闘側では特に芥正彦の特異すぎるキャラが圧倒的破壊力がある。件の赤ちゃんも芥の娘であるという。真面目な筈の討論会に赤ちゃんをだっこしてきてしまう傍若無人ぶり。しかも誰もそれも咎めない。赤ちゃんの至近距離でぷかぷかタバコ吸う芥のトンデモなさがむしろカッコいい。半世紀経った今の芥にはあまり魅力を感じないが、むしろ赤ちゃんの今が知りたい。

観ているうちにだんだんこれが三島由紀夫という不世出のアイドルのファンミーティングというような気がしてきた。赤ちゃんの影響もあるのだろうか、どこか和やかでのどかで和気あいあいとしていて三島と芥はタバコの貸し借りしているし、抜群に話が上手い三島に度々起きる笑いと拍手もホッとする。敵味方に分かれて罵詈雑言という討論会ではまるでない。
討論の中身については正直いってぼくの理解が及ばないことが多く、勉強しなおして来ますという感じだが、映画そのものとしては存外後味は悪くなかった。三島が討論会のラストに「諸君の熱情は信じます」と言うところは感動すら覚える。

半世紀という時間が経ち、全共闘の皆さんも三島の盾の会の皆さんも若者から老人へと変貌を遂げた。みんな年老いたのにただ三島由紀夫だけがあの自決の日から時が止まったまま。ガラスの棺に入った眠れる【映画パンフレット】 『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』 出演:三島由紀夫 - ムービーファン
【映画パンフレット】 『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』 出演:三島由紀夫 - ムービーファンアイドルをみんなで追想している、この何たる残酷さ。

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