『ドイツ怪談集』 幼児虐待と近親相姦、ドイツの遠い記憶

アンソロジー『ドイツ怪談集』種村季弘編 河出文庫 1988年12月2日初版発行 2020年3月20日新装版初版発行
2020年3月14日(土)読了

(注意!)ネタバレあり

19世紀から20世紀のドイツ怪奇小説の短編16編を収録したアンソロジー。古色蒼然としすぎて今となっては読むに堪えないものから、今読んでも十分面白いものまで玉石混交。つまらないと思った作品についてはあえて感想を書くこともあるまい。気に入った、気になった作品のみ取り上げておくことにする。

「金髪のエックベルト」ルートヴィヒ・ティーク
解説にはこの作品が童話となっているが、もしその通りならこれは恐ろしい童話だ。グリムが童話から排除していった児童虐待や近親相姦といったものがオブラートに包まれずストレートに描かれている。結末も極めて悲劇的。主人公である夫妻のうち、妻は死に夫は発狂したのち死んでいく。因果応報と言うにはあまりにも過酷。
傑作。

「オルラッハの娘」ユスティーヌ・ケルナー
20歳の娘マグダレーネに憑りついた悪霊、それは400年前に悪行の限りを尽くして自殺した修道僧がよみがえったものだった。生前にたくさんの人を殺し、今また悪さをしようとする純粋悪のような存在。日本の怪談の亡霊とかだと、どちらかと言えば、お岩様に代表されるように生前に酷い目に遭って殺され、後でよみがえって恨みを晴らすみたいな被害者タイプが目立つのだが、こっちは生前も死後も徹底した加害者。お国柄の違いだろうか。
そこが非常に面白い。

「奇妙な幽霊物語」ヨーハン・ペーター・へーベル
城主が何か月もの旅行に出て今は誰もいないはずのお城に立ち上る幽霊の噂。それを聞いた豪胆な男が城に探索に行くがそこにいたのは幽霊ではなくて贋金つくりの犯罪者集団だった。彼らは幽霊に見せかけてこの城に人々が立ち寄らないようにして自分たちの仕事を行っていたのだ。秘密を知った男に贋金つくりたちは、「何一つ口外しない」ことを条件に男を無罪放免にした。
数週間後、男のもとに「感謝の印」として高価な品々が送られてきた。手紙には「今はすべてが終わり」「気が向いたらだれなりともあの話を聞かせるがよい」あった。全然幽霊物語じゃないところがすっとぼけてユーモラス。

「カディスのカーニヴァル」ハンス・ハインツ・エーヴェルス
謝肉祭の前日。たくさんの人がいる真っ昼間の広場に突然現れたのは、7フィートもある大きくて太い木の幹。それが自力で広場を行ったり来たりのろのろと移動していく。ただそれだけで別に人に危害を加えるというわけでもない。人々はこの奇々怪々な木の幹にナイフを刺し斧を打ち下ろし、やっつけた。木の幹にできた裂け目から中を見ると別に機械仕掛けではないし、誰か人間が中に入っていたわけでもない。ごく普通の木の幹。それがのろのろと歩いたというだけ。

「死の舞踏」カール・ハンス・シュトローブル
これも謝肉祭のオハナシ。二年間同棲していた女性ベッティーネに死なれたばかりで傷心の男オスターマンは友だちに勧められて気を紛らせるために謝肉祭に参加する。そこで彼は髑髏の仮面をつけ屍衣を身に着けた若い女性に出会う。彼女に心ひかれた男は、ベッティーネと同棲していた部屋に彼女を招く。
この髑髏の仮面の女が死んだベッティーネだというオチなのは予想はつくが、彼女は何故か「情欲的で気違いじみた、おかしな幽霊のダンスを始めた」というのは予想だにしなった。確かにタイトル通りではあるがドイツ怪談集 (河出文庫) [ 種村 季弘 ] - 楽天ブックス
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