『世界ベスト・ミステリー50選 上下巻』 いつか蝋人形になる日まで

『世界ベスト・ミステリー50選 上下巻』

つづき

(注意!)ネタバレあり

「当て逃げ」シャーロック・アームストロング
男が自動車を走行中にほかの自動車と事故を起こし、その車は横転したが男はそのまま現場を逃げ去った。あとで新聞を読むと相手の自動車の運転手は女性で死亡したと分かった。男は、自分の自動車に目立った傷もないことを確認したが、一刻も早く自動車を始末することにした。
男は新聞広告で土地を手放す代わりに自動車が欲しいというのを見て、相手の男に会いに行く。相手は早急に土地を処分して自動車で遠い土地に行きたいと言う。自分の自動車は恋人の女性に貸していたが彼女はつい先日自動車事故で亡くなった。それを聞いた男は震えが止まらなくなる。
因果応報、自業自得のオハナシ。なかなか上手い。

「ゆえ知らぬ暴走」スタンリー・エリン
タクシーに乗った男は、偶然その運転手が昔の同僚であることに気づく。彼の話によれば、リストラによって解雇され辛酸をなめ続け、今はタクシー運転手をやっているというのだ。その話を聞いた男の胸に不安が膨れ上がっていく。
中年世代のリストラという今では日本でも珍しくもないはなしだが、1978年のアメリカでは既にこういう作品が書かれていたというのが面白い。そのころまだ日本は終身雇用制なる幻を信じていたころか。
結局、男は正式にリストラを言い渡されたわけでもなく、上司との話し合いに怯えて銃を使って全てをおしまいにした。最終解決法で銃が出てくるあたりは如何にもアメリカ。その辺は日本と違う。
警察が捜査しても男の動機は分からなかったというオチ。

「銀行から盗む三つの方法」ハロルド・R・ダニエルズ
一人の男から雑誌編集部に送られてきた小説の原稿は「銀行から盗む三つの方法・その一」とあった。編集者が読んでみると小説としては稚拙だが、そこに書かれている内容にはリアリティーが感じられた。もっとも銀行から盗むといっても犯罪的な手段によらずに極めて合法的なやり方で銀行のお金を手に入れる方法なのだ。編集者は銀行に連絡してこの方法が実現可能かどうか確かめると可能との答えが返って来る。
銀行にとってこの小説が世に出ることは脅威だ。この方法を真似るものが出れば、銀行業界のみならず国家の危機になるかも。
続いて送られてきた「その二」を読んだ銀行関係者は金銭で作者と手打ちをすることを提案する。まだ見ぬ「その三」はどんな恐ろしい内容なのか。
オチが非常に面白い。

「これが死だ」ドナルド・E・ウェストレイク
首吊り自殺した男のモノローグに終始する作品。なかなかユニーク。妻が浮気していることに逆上して自殺したのだが、死んでからいろいろ考えてみれば死ななきゃよかったのにと思うこともある。何より妻の浮気相手がゲイだと知ったりするとなおさら。だが、これぞまさに後悔先に立たず。自殺した男が、時が戻ったかのように自分が首吊り自殺する一部始終を目撃するというのも面白い。こうやって永遠にリピートしていくのか。

「大統領のネクタイ」パトリシア・ハイスミス
男は、近所にある「恐怖の蝋人形館」が大好き。そこは過去の有名な殺人者たちとその殺人場面を蝋人形で再現し展示してある夢の国。ある日、男は、蝋人形館に忍び込み、職員三人を惨殺して蝋人形館に展示した。そのことを自慢したくて、男は警察に行って「自分がやった」と告白するのだが、精神病扱いされて全く相手にされない。男は誓う。いつかもっと大量に人間を殺して有名になってこの蝋人形館の蝋人形として展示される日を目指すと。
殺人ばかりの蝋人形館というとテレビの『ミステリーゾーン/陳列された目』というのがあったがそれを凌駕するえげつなさ。さすがハイスミス、ハイレベルだ。




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