麻耶雄嵩『隻眼の少女』 兇業の娘

小説(ミステリ)『隻眼の少女』麻耶雄嵩著 文藝春秋 2010年9月30日第1刷発行 2011年1月20日第3刷発行
2019年11月28日(木)読了

(注意!)ネタバレあり

麻耶雄嵩という人の本を読むのは初めて。隻眼の美少女探偵が主人公というのに惹かれて読んでみた。
ひなびた温泉宿がある地方の小さな村。その村には災いが起きた時にそれを鎮める「スガル」という者がいて、それが代々受け継がれて来た。
1985年・冬、その村に恐ろしい出来事が起きた。次代のスガルである少女が惨殺されたのだ。やがてそれは連続殺人へと発展する。
その事件の真相を突き止めるために動き出したのは、隻眼の17歳の少女探偵・御陵みかげだった。

如何にも古風な探偵小説みたいな設定。単に殺すだけではなく、わざわざ首を切り落とし、別のところに飾っておくとか、昔ながらの悪趣味。横溝正史の小説をどうしても思い出してしまう。『獄門島』とかあのあたり。でも、何故いま、こういう小説を書くのかよく分からなかった。凄いいまさらな感じがして、読んでいてたびたび疑問符が浮かんだ。
ヒロインの美少女探偵の魅力に惹かれて読んでいったのだが、それだけじゃ弱いなと思った。隻眼の少女 (文春文庫) [ 麻耶 雄嵩 ] - 楽天ブックス
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それでも退屈しないで読み進めていくと、話は急展開の末、犯人が突き止められ、第1部は終わりとなる。ここまでで全体の三分の二。
で、第2部は時代が飛んで、18年後の2003年・冬である。
第1部で決着したはずの事件だったが、村で新たな殺人が起きてしまった。しかも18年前と同じ殺害方法で。実は真犯人は別にいたのか?
第2部では、第1部の探偵・御陵みかげの娘である御陵みかげが登場し、事件に迫る。だが、彼女が辿り着いたのは恐るべき真実であった。

ここに至って、作者が狙ったのは、横溝正史張りの古風な探偵小説ではなく、むしろそれをひっくり返すパロディのような作品であった。なるほど、これがやりたかったのか。確かにこれはすこぶる意外性に富んでいて「してやられた!」という気にさせられた。それにしても、この意外な真相は実に後味が悪い。こんなことのために何人もの人間を殺さねばならなかったというのが嫌な感じである。そこも作者の狙いだったのか。
因習に縛られた村の暮らし、その人間関係、そしてスガルの歴史といったものが結局ミスリードするために設定されていたとは。
真犯人はまさにサイコキラーというべき人物だ。傲慢で自信満々、唯我独尊な性格は最初から描かれていたが、そういうキャラ設定かと思っていた。最初の脅迫状にあった「兇業の娘」という言葉は、スガルに関連した言葉ではなく、実は真犯人を指し示す言葉だったのか。
連続殺人が実はその中のたった一つの殺人をカモフラージュするために行われた、というのはアガサ・クリスティーの作品にもあるが、そのやり方が卓越していて凄い。そして、もう一つの動機がまた、思いもよらないものだった。

クライマックスの真犯人の告白も冷酷非情なものだが、ある人物への愛もほのかに伺える。「夢中だったから」という言葉にそのが示唆されていると思うのだが。

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