『夏への扉』 文化女中器ハイヤード・ガール

夏への扉 (ハヤカワ文庫) [ ロバート・A.ハインライン ] - 楽天ブックス
夏への扉 (ハヤカワ文庫) [ ロバート・A.ハインライン ] - 楽天ブックスSF『夏への扉』THE DOOR INTO  SUMMER 1957年 アメリカ ロバート・A・ハインライン著 福島正実訳 ハヤカワ文庫 2010年1月25日発行 2014年7月15日12刷
2019年10月29日(火)読了

久々の再読。
あまりにも昔に読んだのでサッパリ内容を覚えていない。名作の呼び声高い作品なのに我ながらどうしたことだろう。つまらなかったのか、面白かったのか。かすかな記憶で人が言うほど傑作とは思えないという気がしたのを覚えている。
まあ、そんなあやふやな状態では埒が明かないのできちんと最初から最後まで読んでみることにした。

意外にも面白かった。
ベストテン級の名作もしくは傑作とは到底言えないけれど、かなり楽しく読むことができた。最近読んだ、同じハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』や『宇宙の戦士』が重量級の力作すぎて辟易したのに比べてこれは軽量、軽快、軽妙で後味も良い。
そもそもこれってコメディだったんだなあ。やっぱり再読するって大事なことだ。
もっとも、前半はコメディっぽくはない。むしろ悲劇の男の物語。悪女に騙され、仕事仲間の男に裏切られ、せっかくの発明品を奪われ、自分の会社を追い出された失意の技術者ダン・ディヴィス。とことん酷い目に遭った挙句、冷凍睡眠コールドスリープに追いやられ30年先の未来で目覚める。踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。この辺までは笑えるどころか、悲しすぎる男のオハナシ。
で、ここから彼を酷い目に遭わせた男女に復讐、というわけではない。復讐以前にすでに男は死んでいるし、女は見る影もなく落ちぶれている。悪人どもをやっつけるカタルシスはない。ここがこの作品のユニークなところ。
主人公ダンは、自分が冷凍睡眠していた30年に何があったか、その真相を探るのだが、なかなか進展しない。
そのことをダンは技師仲間に愚痴る。
「もしここにタイムマシンがあったら真相を突き止められるのに」
「あるさ」
「なにっ?」
何というご都合主義か。ある科学者が作った不完全なタイムマシンが存在するのだという。動かさないと未来に行くか過去に行くか分からない。行ったら行ったきり。とてもヤバくて実用化できず軍事機密になっていたのだ。
それを気軽に「あるさ」と言ってしまうのがなんともいい。
この辺からぐっとコメディっぽくなる。なんとなく映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い出す。て、言うか、この小説の方が先だが。変人科学者が作り出したタイムマシンで30年前にタイムスリップという両者に共通の荒唐無稽もコメディならばOKである。
科学者を徹底的に怒らせてタイムマシンを作動させるのも如何にもコメディぽい。さらに到着した場所には全裸の男女がいて・・・、というのも笑える。服を着なくなった未来社会に来たのかと思いきや、30年前のヌーディストの集まりだったというオチがつく。
これ以降の展開もなかなか愉快で楽しめる。
ハッピーエンドなのも嬉しい。
勿論、62年前の作品なのでシンプルすぎて物足りない気もするのだが、逆に煩雑なタイムパラドックスとかにかまけずにストレートに話しを進めるのは好感が持てる。

それにしても、ハイヤード・ガールに文化女中器という訳語を考え出した福島正実は天才であると思う。






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