『日本SF傑作選2 小松左京』 あってはならない、だが、ありえたかもしれない世界

日本SF傑作選2 小松左京 神への長い道/継ぐのは誰か? (ハヤカワ文庫JA) [ 日下 三蔵 ] - 楽天ブックス
日本SF傑作選2 小松左京 神への長い道/継ぐのは誰か? (ハヤカワ文庫JA) [ 日下 三蔵 ] - 楽天ブックス『日本SF傑作選2 小松左京』日下三蔵編 ハヤカワ文庫JA 2017年10月15日発行
2019年7月14日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

短編7編プラス長編1編収録。

「地には平和を」
SFデビュー作。昭和20年8月15日に戦争が終わらず本土決戦になった日本で生きる少年兵を描く。改変された歴史という今となっては目新しさのない題材だが、この少年兵とほぼ同世代である小松左京にとってこれは書かねばならない作品だという切迫感が伝わって来る。全く架空の話ではあるけれど、ありえたかもしれない世界の話。
ラストで正しく修復された歴史の「現在」に生きる男にとってここが「突如として色あせ、腐敗臭をはなち、おぞましく見えた」というのは意味深である。決して本土決戦が行われる世界が良いわけではないのは無論だが、この平和な世界にも違和感を感じざるを得ないという複雑な気持ち。
傑作である。
歴史改変ものに引っ掛けて言うなら、もしもこの作品が直木賞を受賞したら(候補作だった)、日本のSFの歴史は変わったかもしれない。

「お召し」
ある日突然、この世界のすべての大人が消え失せて子どもたちだけになった。もっと正確に言えば、満12歳以上の大人が消えたのだ。残されたのは小学生以下の子どもたち。その子どもたちも満12歳になった瞬間に消滅する。そして、新たに生まれてくる子どもは突然空間から出現する。
この異常な状況下で子どもたちはどう生きていくかという話。非常に面白い。というか、このネタだったら長編にだってなっただろうと思われて些か勿体ない。
小学生の子どもが書いた手記という体裁になっているのも上手い。ただ、プロローグとエピローグは未来人らしきものの様子が描かれる。結局、この異常事態の原因や解決は明示されず、どうやらこの状態が3000年の未来まで続いているようなのだ。ちょっと肩透かし。

「物体0」
ある日突然、日本列島に超巨大な物体が出現し、日本の半分くらいを下敷きにして潰滅させてしまう。それによって、関東地方の大部分がなくなってしまったため首都機能は全滅し、代わりに関西地方でその機能を担うことになる。
『日本沈没』に先駆けて、日本半分沈没という感じの内容である。謎の物体が突然出現するとか荒唐無稽ではあるけれど、それがもたらした甚大な被害と復興のプロセスはリアリティーがある。災害からは逃れられない国なんだ、日本は。
ラストで物体の正体らしきものが明かされるのだが、そんなものが何故超巨大化したかの説明はない。これもちょっと肩透かし。こういう終わり方が小松左京は好きなのだろうか。

「紙か髪か」
ある日突然(こういうの好きなんだな、小松左京は)、世界中から紙という紙がすべてしまうという事態が起きて大混乱というお話。これってペーパーレス化が進んだ現代だとどうだろうか、あんまり変わらんか。

「継ぐのは誰か?」
長編。昔読んだ時よりも面白く感じた。ぼくの理解力が幾分なりとも小松左京に追いついたか。そもそも半世紀まえにコンピューターネットワーク社会を想定していたというのが凄すぎだろう。
お話としては、殺人事件の犯人を捜すミステリであり、世界連邦が設立された未来社会を描くSFであり、謎を追って南米へ飛ぶ冒険ものでもある。そして、肝心要のテーマは、人類の後継者は誰か?であり、もっと言えば人類とは何か?である。この難しい問いに答えようとした壮大な試みの作品である。ここに登場するのは、人類とは違う別の種類の人類。ただ、「新人類」というのは適切じゃないか。古くから存在していたが、人類が知らなかった人類である。この設定が面白い。


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