『世界推理短編傑作集 全5巻』 奇妙な味のスイーツ

アンソロジー(ミステリ)『世界推理短編傑作集 全5巻』江戸川乱歩編 創元推理文庫 新版・改題2018年7月13日初版(第1巻)~2019年4月26日初版(第5巻)初版
2019年(令和元年)5月3日(金)読了

伝説的であり、今もなお読み継がれているアンソロジーのリニューアル版。『世界短編傑作集』というタイトルで出ていたものを改題・新カバーにして、中身のほうではいくつかの作品が新訳になり、従来収録されていなかった作品を追加している。古典的建築物が綺麗にお色直しした感じ。

この全5巻のアンソロジーは、ぼくにとっても非常に思い出深い。何しろぼくが小学校6年生の時に生まれて初めて自分の小遣いで自分の意志で本屋に行って初めて買った大人向けの本が、この旧シリーズの第2巻だったのだから。一番最初にこれに巡り合ったのは非常に幸運といえる。おかげですっかりアンソロジー好きになり、それは今でも変わっていない。ちなみに初めて買った大人向けSFは、同じ創元推理文庫のフレドリック・ブラウン編『SFカーニバル』でこれもアンソロジーだ。

さて、何十年ぶりかで全5巻を全部読んだわけだが、さすがに忘れているものも多かった。ま、それはそれで新たな気持ちで読めたので良かったというべきか。
作品としては当然ながら全部が全部面白いとは言えない。そもそもこれが傑作か?と思うものもあるし、そこまでいかなくても確かに昔は傑作だったろうけど、今となっては時代の風化に耐えられないものもあった。
編者の江戸川乱歩が、序文で分類している「謎の構成に重きをおくもの」が特に色褪せて見える。これはまあ仕方のないことで、後年に色々と凝ったものが出てくると、やはり古典はシンプルすぎて弱く感じる。古典あっての現在であることは承知の上で、でもやっぱりつまらない。
一方、乱歩が「奇妙な味に重きをおく場合」と規定した作品は今読んでもさほど遜色なく、面白い。これはぼくの好みということも多分にあるが、案外古くならないのではないか。
それにしても、乱歩が生み出した「奇妙な味」という言葉、絶妙である。ぼくなんかいまだに折に触れ使っている。自己流に解釈して色々なケースで使える実に便利な言葉だ。

さて、全5巻全47編読んだ記念にベストテンを選んでおこう。やっぱりどうも「奇妙な味」のものが中心になってしまった。だって面白いんだもの。

1「銀の仮面」(1932年)ヒュー・ウォルポール 
2「オッターモール氏の手」(1929年)トマス・バーク 
3「二壜のソース」(1932年)ロード・ダンセイニ 
4「盗まれた手紙」(1844年)エドガー・アラン・ポオ 
5「赤毛組合」(1891年)アーサー・コナン・ドイル 
6「妖魔の森の家」(1947年)カーター・ディクソン 
7「信・望・愛」(1930年)アーヴィン・S・コッブ
8「夜鶯荘」(1924年)アガサ・クリスティ
9「疑惑」(1933年)ドロシー・L・セイヤーズ
10「奇妙な足音」(1910年)G・K・チェスタトン


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