『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』 時は乱れて、時既に遅し

SF(アンソロジー)『時間SF傑作選 ここがウィネトカなら、きみはジュディ』大森望編 ハヤカワ文庫 2010年9月25日発行
2019年2月11日(月)読了

(注意!)ネタバレあり

時間SF短編13編を収録したアンソロジー。表紙に、SFマガジン創刊50周年記念アンソロジーとある。

「彼らの生涯の最愛の時」イアン・ワトスン&ロベルト・クアリア
18歳の童貞の少年ジョナサンが出会ったのは、65歳か70歳くらいの女性エレナだった。二人は恋に落ち、やがてセックスをする。めくるめく快楽の夜が過ぎた翌朝、ジョナサンが目覚めると、エレナは死んでいた。ジョナサンにとって最初のセックスは、エレナにとって最後のセックスだったのだ。
ジョナサンはエレナが忘れられず、エレナと再会する方法を研究し始める。
歳の差&時間差カップルの純愛&エロス物語。山田太一『飛ぶ夢をしばらく見ない』やロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』を彷彿とさせる。ただ、それらと違うのは、ギャグを織り込んだブラック・ユーモア風味なところ。念願のセックスをしたら、アッサリ相手が死んでしまうというところから始まって、時間を越えて再会したら、何故かデブ男に邪魔されてオジャンになるとか、ヘンテコなところが多い。ま、そこがいいのだが。
傑作。

「去りにし日々の光」ボブ・ショウ
過ぎ去った日々の光景が向うに見えるスロー・ガラスというものを題材にした作品。でも、これってホーム・ビデオの映像とどこが違うのだろう。いまひとつ、感動できず。

「時の鳥」ジョージ・アレック・エフィンジャー
過去の時代に観光旅行に行く話。古代のアレキサンドリア図書館を訪れた主人公が観たものとは・・・。
客観的な過去などというものがなく、大多数の一般大衆がイメージするような主観的な過去しか存在しない、という発想が面白い。ドラマや映画や小説で描かれた虚構の過去がそのままそこにある。

「世界の終わりを見に行ったとき」ロバート・シルヴァーバーグ
こちらは逆に未来の時代に観光旅行に行く話。しかもタイトル通りに世界の終わりを見るための旅行。
ところが、さまざまな人が見た世界の終わりはそれぞれ違っていた。世界の終わりはいくつもあるのか。これもまた客観的な未来などなく主観的な未来しかないということなのか。それとも未来は確定していなくて、いくつもの終わりの可能性があるのか。
人々は呑気に世界の終わりをに見にいっているが、現実には世界はテロが横行し、自然災害が起き、危険なウィルスが蔓延し、とまさに危機的状況なのだが、その辺は全く無頓着なのが皮肉な味わいになっていて面白い。

「昨日は月曜日だった」シオドア・スタージョン
再読。世界は舞台、人生はお芝居、そして人は役者。こういう発想の話は色々あって今さら新鮮味はないけれど、ユーモアがあって楽しく読める。

「旅人の憩い」デイヴィッド・I・マッスン
再読。何度読んでも面白いのは発想が優秀だから。時間旅行が場所の移動で出来てしまうという面白さ。現実に時差というものがあるのだからある程度は納得だが、それをSF的に膨らませているのがいい。しかも戦争が背景にあるのが効果的。
傑作。

「いまひとたびの」H・ビーム・パイパー
戦火に倒れた43歳の男が目覚めると13歳の頃の自分に戻っていた。時を30年遡り、肉体は13歳、頭脳は43歳の男が、考えたこととは・・・。
よくある話ではあるのだが、この異常事態に対する主人公の適応力が凄い。別にうろたえもせず、悲観的にならず、この状態を最大限に生かし何ができるか実に前向きに考え行動しようとしている、そこが面白いし、ちょっぴりだが怖いところでもある。

「12:01PM」リチャード・A・ルポフ
時間ループもの。世界が同じ1時間を繰り返していることに世界でただ一人気付いてしまった男の悲劇。ラストに至るも彼はそのままの状態。発想としては今となってはありふれているけれど、それでもやっぱりこういうのは好き。

「しばし天の祝福より遠ざかり・・・」ソムトゥ・スチャリトクル
これも時間ループもの。こちらは世界が同じ1日を繰り返し、それを世界中の人が認識しているという話。それをやったのが異星人だというのが、なんだか可笑しい。

「夕方、はやく」イアン・ワトスン
これも時間ループもの、ちょっと変わっているが。世界が同じ1日を繰り返すのだが、それが人類の歴史をなぞっている1日だというのがミソ。原始的生活から文明を築いて今に至るまでを1日で体験し、それが毎日続く。解説にあるように星新一の「午後の恐竜」を思い出した。オチは違うけれど。

「ここがウィネティカなら、きみはジュディ」F・M・バズビイ
時間を超える男女カップルの恋愛もの。ただ主人公たちの時間は流れているのではなく、バラバラ。普通に子どもから大人にと順序良く成長するのではなく、時間を先に飛んだり、戻ったりして人生を生きている。数カ月ある時代に生きて、また別の時代に飛んで数年暮らし、という連続。いや生きるだけではなく既に死も先に体験している。すれ違い恋愛ものの究極。よくこんな変な事考えたものだ。
傑作。




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