『技師は数字を愛しすぎた』

小説(ミステリ)『技師は数字を愛しすぎた』1958年 フランス ボワロ&ナルスジャック著 大久保和郎訳 創元推理文庫 1960年3月25日初版 新版2012年4月27日初版
2019年1月29日(火)読了

(注意!)ネタバレあり

フランスのミステリ作家コンビであるボワロ&ナルスジャックの作品。
以前から非常に意味深なタイトルで上手いなあと思って、読んでみたかった。
読んでみたら、このタイトル、実はある種、ネタバレなのである。

パリ郊外の原子力関連施設に勤務する技師が射殺され、核燃料チューブが盗まれるという事件が起きる。事件現場は密室状態で犯人の姿は影も形もない。そんな不可能犯罪にパリのマルイユ警部が挑む。

冒頭の数ページでもう事件が起きるというサービスの良さ。それ以後の展開もテキパキしていて気持ちイイ。摩訶不思議な状況の作り方も上手いし、単に殺人事件の謎だけではなく、核燃料爆発の恐怖も加味しているので興味が増す。もっとも、核燃料の方は、次第に尻つぼみになって行ってしまうのだが。スケールの大きな国際謀略サスペンスになるか、と最初の方では思うのだが、そうはならず。オハナシを盛り上げるための一つの要素に過ぎない。結局、よくある男女の愛憎のもつれが生み出した悲劇、というところに着地するのがいかにもフランスらしい。

それにしても今さらだけど、フランスって核保有国だったんだなあ、と再認識。
そのうえで「区は丸ごと破壊され、パリの半分が少なくとも十年間は放射能に汚染されます」というチューブを単にマクガフィンに使うとは勿体ない。もうちょっと生かしきれなかったか。

主人公のマルイユ警部が、そんなに優秀にも頭脳明晰にも見えないのがいい。ずっと事件の謎が解けず、犯人に翻弄されるばかりで、「この人、本当に事件の真相を暴くことができるのだろうか」と心配になるほど。そこがいい。頭が働かない分、よく動くというのが好印象。推理よりもアクションで話を進めている感じで、その辺は凄く映画向きのストーリー展開。
勿論、心配せずともラスト数十ページでマルイユ警部は事件の真相に辿り着く。

その真相。まあ、納得できるものではあるけれど、な~んだ、という気もしてしまう。冒頭の飛び切りの不可能性に物凄く期待のハードルを上げてしまったのでどうしてもそうなる。ま、ミステリの謎解きって多かれ少なかれ、そういう落差を味わうことがある。
最初の密室殺人が、犯人が完全に意図したものではなく、むしろ被害者の行動が不可能状況を作り出したというのが面白いと思った。時間差の密室と言おうか。
この密室の謎について解説の戸川安宣が、ルルーの『黄色い部屋の秘密』を引き合いに出しているが、大昔に読んだきりでよく覚えていない。久々に読んでみたい。




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