『20世紀SF 第1巻 1940年代 星ねずみ』 ミッキーマウス、宇宙に行く

『20世紀SF 第1巻 1940年代 星ねずみ』中村融・山岸真編 河出文庫 2000年11月2日初版発行
2018年11月25日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

1940年代から10年単位で傑作SF短編を収録したアンソロジー。最初の第1巻1940年代は、11編収録。
ま、傑作と言っても今、ぼくが読んでどれもこれも面白いというわけではない。なんでこれ入れたのかというのも当然あるわけだが、肌に合わなかったと考えて、面白かったものだけについて簡単に感想を書いてみる。

「星ねずみ」(1942年)フレドリック・ブラウン
面白い。いかにもブラウンの本領発揮的なユーモラスなSF。しかし、それにしてもいきなり冒頭から、

ミッキーマウスは最初からミッキーと名乗っていたわけじゃない。

という文章なのには今さらながら驚く。大丈夫か、ブラウンさん。こんな風にミッキーマウスの名前を使ってディズニーからクレームはなかったのか、いささか心配になる。
物語は、変人博士の家にいたミッキーなるねずみが、ロケットに乗せられ、ねずみ史上初めての宇宙の旅に出たところ、小惑星に辿り着き、そこにいた異星人によって人間並みの知性を与えられ、喋ることもできるねずみとして博士の元に無事帰還するのだが・・・、というもの。ミッキーが地球に帰って最初に遭遇した酔っぱらいが見たのは、「白手袋に派手な赤の半ズボンに鮮やかな黄色の靴という格好」のねずみだったというのが面白い。それって、瓜二つすぎる、あのスターと。
呆気ないオチも上手い。ディズニーで実写映画化して貰いたい。

「万華鏡」(1949年)レイ・ブラッドベリ
数十年振りの再読。と言ってもあのあまりにも有名なラストだけ鮮明に覚えていて、他の部分はスッカリ忘れていたので、改めて読んでみて、ビックリ。こんな酷い話だったのか。あのラストの感傷的な美しさに感動していたのだが、実はこれは恐ろしい話だったのだ。
宇宙船の事故で宇宙空間に投げ出されてしまった12人の乗務員たち。宇宙服を着たまま、離ればなれになって、ただ宇宙空間を彷徨い死を待つばかりの彼ら。冷静な者もいれば、狂乱して叫び続ける者もいる。ホリスは、そんな叫ぶ男に近寄り、相手のヘルメットを叩き割った。いやいや、これは酷い。極限状況にいる者同士なのに叫び声が無線から伝わってうるさいからと言って殺すかね。実は、このホリスこそあの感動的なラストの主役なのである。こんな酷い奴だったのか。だが、読んでいるうちに酷い奴だからこそ、ラストが生きる気がしてきた。ホリスの深い苦悩と葛藤がシリアスに描かれる。こういう男こそが、願いを託すにふさわしい男なのだと。
それにしても、1949年なんて古き時代に宇宙空間における孤独と絶望をここまで冷厳に描き、しかもほんの少しの希望を見せることができたとは、まさにブラッドベリは天才。『冷たい方程式』や『ゼロ・グラビティ』を遙かに超えている。

「ベムがいっぱい」(1942年)エドモンド・ハミルトン
フレドリック・ブラウン作、と言ってもおかしくないようなユーモアSF。SFそのものを笑いのめしたという点では、ブラウンの『火星人ゴーホーム』や『発狂した宇宙』を思わせる。
地球からの探検隊が史上初めて火星に到着すると、なんと生物などいないと思われていた火星に多種多様な火星人がうじゃうじゃいるではないか。その火星人たちは、地球人を見た途端、襲いかかって来る、「お前らが我々を作った」と言って。実は、火星人というのは、地球のSF作家たちが想像して作品に書いたものが火星で実体化したのだ。
人間の想像力が、遠く離れた場所で現実の生き物を作り出す、という発想は昔からある。シュペルヴィエルの超名作『海に住む少女』(1931年)とか。それをここでは、SFのパロディみたいな形で面白おかしく作っていて楽しい。オチもいい。

「昨日は月曜日だった」(1941年)シオドア・スタージョン
実は、人生はお芝居であり、人間は俳優で、世界は舞台セットに過ぎない。という発想の作品は、手塚治虫にもあるし、ディックにもあるし、テレビの『ミステリーゾーン』にもあった。そういう良くある話なのだが、それを面白くするのは、やはり作り手の匙加減だろう。このスタージョン作品は、シリアスに傾かず、ユーモラスに仕上がっているのが気に入った。
20世紀SF〈1〉1940年代―星ねずみ (河出文庫)
河出書房新社
アイザック アシモフ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック