『われらはレギオン 第1巻 AI探査機集合体』 ビル・パクストンをマイケル・ビーンに格上げした。

SF(小説)『われらはレギオン 第1巻 AI探査機集合体』WE ARE LEGION(WE ARE BOB) 2016年 
アメリカ デニス・E・テイラー著 金子浩訳 ハヤカワ文庫SF 2018年4月15日発行
2018年9月30日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

SF大会に参加したボブは、会場近くで自動車に撥ねられ、死亡した。ところが、彼は117年後の2133年に甦った、恒星間探査機のAI(電子頭脳)として。そこから、彼が生前では予想だにしなかった新しい人生が始まったのだ!
ボブが覚醒した世界は、キリスト教原理主義国家になったアメリカであり、他にはユーラシア合衆国、中国、オーストラリア連邦、アフリカ共和国、ブラジル帝国の大国が世界の覇権を争っていた。

こういうディストピアのなかでAIというかコンピュータプログラムになった主人公ボブが活躍する話かと思いきや、ボブは本来の目的である恒星間の探索のために地球を出発して未知の世界に飛び込んでいく。
では宇宙開発もののSFかと思いきや、何とボブが宇宙に出た後で核戦争が勃発し、地球は荒廃し、人類の99.9%は死滅した。ごくあっさりと、悲壮感もなく。この辺の展開は予想していないので驚く。
それ以降は、宇宙開発も当初の話とは違い、僅かに生き残った(それでも1500万人いる)を汚染された地球から脱出させ、新しい居住区に連れて行くという切迫したものになっていく。さらにそこにブラジル帝国の生き残りが、執拗にボブの宇宙船を攻撃してくる。それにどう立ち向かっていくのか、ボブ。
と、あらすじを書くと深刻な感じだが、何せ主人公ボブがSFおたくで映画おたくでユーモアのセンスがあり、ポジティブな性格なのであまり深刻になったり暗くなったりしない。ボブ(およびボブのコピー、クローンであるボブ仲間)の軽妙、軽快な一人称で語られるオハナシは、頻繁にSFや映画絡みのギャグが飛び出し、誠に楽しい。

生前、映画『キャスト・アウェイ』を彼女と一緒に見たボブ。漂流して辿り着いた無人島で一人きりで4年間暮らす、という内容の映画に彼女は「悪夢みたい」と感想を述べたが、ボブはそれに驚いた。彼には夢のような物語と思えたからだ。誰にも邪魔されず4年間一人で暮らす喜び。まさか『キャスト・アウェイ』をそういう風にとらえるとは、面白い。『キャスト・アウェイ』見直したい。
実は、この『われらレギオン』自体が、『キャスト・アウェイ』のオマージュではないかと思えてくる。家族も友だちも死に絶えた未来で一人宇宙に旅立ち、一人で闘っていく。勿論、彼が生み出したクローンはいるけれど、それは『キャスト・アウェイ』のウィルソンの進化系なんじゃないか。

未知の惑星を探索していくうちにデルタ人という原始的種族に出会うエピソードも面白い。ボブがおせっかいにも彼らを導いていく姿を『2001年宇宙の旅』(タイトルは出ないが)と重ねあわせるお遊びがイイ。だが、デルタ人に肩入れするあまりに、彼らの天敵である「ニセゴリラ」族を殺したりする傲慢さはちょっとゾッとする。これがギャグならいいけれど、わりと真面目なのがどうもね、という感じ。

人類の99.9パーセントを戦争で死滅させてもなお、国家間、民族間の揉め事が絶えない、というあたりはシニカルな視点があって面白い。に、してもとりわけブラジル帝国を悪者にしている様なのは気になる。SFにこういう実際にある国家のモジリみたいなのを出すこと、平気なのかな。そのへんの感覚も面白いと言えば言える。

ラストは、「ロッデンベリーも誇りに思ってくれるだろう」という一文で〆。『スター・トレック』ファン歓喜の言葉。

クローンの一人エルマーについて「エルマーは肝が小さいのだろう。ぼくは『エイリアン2』でビル・パクストン演じる登場人物を思い出した」という文章があり、そのあとで「ぼくは心のなかでエルマーをマイケル・ビーンに格上げした」とある。この可笑しさ、『エイリアン2』を観ている人にしか分からない。

途中で異星の知的生命体の痕跡らしきものと遭遇するシーンがありながら、その後がない。この辺は第2巻への伏線になっていくのだろう。第2巻も買って読まなくちゃ。
われらはレギオン1 AI探査機集合体 (ハヤカワ文庫SF)
早川書房
2018-04-15
デニス E テイラー

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