『昭和維新史との対話 検証 五・一五事件から三島事件まで』 帝都暗黒化計画

『昭和維新史との対話 検証 五・一五事件から三島事件まで』保阪正康 鈴木邦男著 現代書館 2017年3月30日第1版第1刷発行
2018年3月13日(火)読了

(注意!)ネタバレあり

対談集。戦前の右翼による国家改造運動、戦時中の軍隊、戦後の三島由紀夫自決などを保阪正康と鈴木邦男が語り合った本。知らなかったことも多く、非常に勉強になり、また面白かった。

現代の右翼のイメージだと、体制べったりで政府に対してひたすら礼讃している感じを受けるが、戦前の右翼はむしろ反体制であり、大掛かりなテロも度々起こしていることが分かる。その辺を語っていくのだが、基本的に人物本位。「社会運動は結局は人で決まるんだということを認識することです」(保阪)
そこで、北一輝、大川周明、橘孝三郎などが取り上げられて、彼らの思想や行動を評価していく。正直言って、名前は聞いたことはあるが・・・くらいのもので、彼らに関する本を読んだことがないので、なるほどと思う程度。いずれもなかなかユニークな人物ではあるようだ。
特に橘孝三郎は、保阪も鈴木もあって話を聞いた人物なのでエピソードも豊富でその人物像がクッキリ浮かぶ。橘は、五・一五事件に関連して門下の者に命じて変電所の破壊工作を画策したという。

鈴木 僕が橘さんに五・一五事件に関して聞いたときには、「帝都暗黒化なんて言ったけど、あれは漫画だったね」と自分で言ってました。だって、五・一五事件って国家改造運動とかクーデターとか、あるいは革命とか思われていますけれど、都会を停電させて真っ暗にするのが目的ってヘンですからね。

保阪 僕もその点は聞きました。「帝都を真っ暗にして、何をやるんですか?」と聞いたんです。そうしたら「一晩真っ暗にして、都会の人間に文明とは何かを考えさせる。都市と農村の比較をして都会の人間に考えさせるのだ」と思ってやったというんです。考えるわけないとぼくは思ったけど(以下略)」

変電所破壊というかもっと過激に爆破というと、新海誠のアニメ『君の名は。』を思い出す。作中でやけに唐突に変電所爆破などというテロ行為が出て来るのが、この胸キュンなラブストーリーに似合わない、と思ったが、こういう元ネタがあったわけだ。ただし、『君の名は。』では、変電所を爆破することによって住民を避難させ、大災害から命を救うという目的があったわけで、橘の意図とはちょっと違う。
それにしても新海誠は過激だ。

結局、テロを含むそういった国家改造運動は実を結ばず、むしろ強力な軍部を台頭させることになった。保阪は、昭和の軍部、軍隊にかなり批判的で厳しい言葉を投げかける、明治のころの軍部はもっと真っ当だったのに、昭和になってどうしてこうも劣化したのかと。さまざまな軍人に直接会って話を聞いてきた保阪ならでは実感だろう。特に軍上層部批判は激しい。

戦後では、やはり1970年11月25日、三島由紀夫が自衛隊に乱入し、自決した事件がいちばん大きく取り上げられている。
何故、三島たちが籠城した総監室に屈強な自衛隊員たちが強行突入して逮捕しなかったのか。総監が人質だったという理由はあるにしても、バルコニーでの演説を全部やらせ、自決という三島が望んだ通りの最期を遂げさせたのか。鈴木は「自衛隊はやっぱり優しかった」と言い、保阪は「だから三島事件の決着を知ったとき、僕は「国家って怖いな」と思った」と言う。
テロの犯人は逮捕し、裁判をして、罰を下すという通常とは違うやり方をこの時、国家は選択したとすれば、それは誰の意志か?
そんなこと考えたこともなかったので、まさに目からウロコという感じで面白かった。
昭和維新史との対話: 検証 五・一五事件から三島事件まで
現代書館
保阪 正康

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