『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』 大人になるための通過儀礼としてのピエロ

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』IT 2017年 アメリカ映画 製作:ニューライン映画 配給:ワーナー・ブラザース映画 原作:スティーヴン・キング 監督:アンディ・ムスキエティ 脚本:チェイス・パーマー キャリー・フクナガ ゲイリー・ドーベルマン 撮影:チョン・ジョンファン 出演:ジェイデン・リーバーハー ビル・スカルスガルド ソフィア・リリス 上映時間135分 日本語字幕スーパー版 字幕:野口尊子 映倫区分:R15+
2017年11月3日(金)日本公開
2017年11月5日(日)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン6 15時の回 座席A-9 入場料1800円 パンフレット720円

(注意!)ネタバレあり

スティーヴン・キングの原作は未読、前の映像化作品(テレビムービー)は未見、予告編も見ていない、という理想的状態でこの映画を見ることができた。非常に面白かった。怖くはなかったが。

冒頭、雨の日に一人の男の子ジョージーが外で遊んでいると、下水道の排水口にいるピエロに声を掛けられる。
そして、そいつはジョージーの片腕を食いちぎり、地下下水道に引き摺り込む。
というシーン、何も知らなかったのでショッキングで、しかもおかしみがある。
「これは凄い映画だ」とワクワクしたが、この映画で一番残酷で一番面白いのは、実はこのシーンだった。
2017年の映画オープニング賞があれば、この映画がグランプリで良い。

27年に一度、アメリカ・メイン州の田舎町デリーに出現し、子どもたちを殺し、貪り食う「IT(イット)」。その名は、ペニーワイズ。ピエロの姿(自称、踊るピエロ)をして子どもたちの前に現れるが、その姿は変幻自在で子どもが恐れるモンスターになったり、人間に化けたりする。登場は、神出鬼没でどこから現れるか定かである。棲み家は、地下下水道。
そんな怪物と7人の子どもたちに戦いを描くホラー映画。

だが、恐ろしいのはペニーワイズだけではない。デリーの町そのものが呪われているかのようで、始終、不穏な空気に包まれている。そこに住む人々も皆どこかおかしい。
子どもたちの親もどこか狂っている。厳格すぎたり、DVを振るったり、性的虐待したり、子どもを病気にしたがる者もいる。さらに、子どもたちをいじめる、年上の不良少年たち。子どものお腹にナイフで文字を刻む蛮行を行ったりして、もはや犯罪レベル。
この辺の描写をみっちりやっているので単にモンスターで怖がらせるホラー以上のものになっている。その辺の雰囲気の醸造が実に上手い。また、これがあるので、子どもたちだけでペニーワイズと戦うという設定が生きて来る。大人に助けを求めたり、不良少年のお兄さんが協力してくれたり、といった展開には全くならない。
大人には頼らない、という一本筋が通っている。
崩壊家族の子どもが見出したのは、助け合える同年齢の子どもである、というのが感動的でもあり、悲しくもある。

DVする狂信者の母親が登場する『キャリー』、子どもたちだけで「死体探し」の旅に出る『スタンド・バイ・ミー』といった過去のスティーヴン・キング作品をすぐさま連想する。この作品にも、スティーヴン・キング印がきちんと刻印されている。
まともな武器も能力も持たない7人の子どもたちが、得体の知れない怪物と戦って勝利する、というのはまさに夢物語だが、そこが素晴らしい。友情の力が、怪物を倒した、って何十年前の少年マンガかよ、と思うけれど、だが、そこがいい。
もちろん、ペニーワイズも簡単に勝たせてくれないので、子どもたちは、艱難辛苦を乗り越えて恐怖に打ち勝つのだ。

この映画が怖くないのは、ペニーワイズというキャラによるものだろう。モンスター、怪人としては、あまりにも饒舌すぎ、チョコマカ動きすぎ。子どもが大好きなんだろうな、とは思うが怖くはない。やはり怖いのは、ジェイソンやマイケルやレザー・フェイスみたいに寡黙を貫いて人殺しに精出す輩だろう。
ペニーワイズは、『エルム街の悪夢』のフレディと同タイプと見た。ちなみに、『エルム街の悪夢』も『IT/イット』も同じくニューライン映画の製作。一時は、経営状態が悪いと聞いていたニューライン映画も持ち直したようで喜ばしい。

ペニーワイズみたいなのをトリック・スターというのかしら?日本のなまはげも連想した。
結果的にかも知れないけれど、ペニーワイズと戦うことによって、子どもたちは子どもから大人に成長したようにも思える。考えようによっては、大人になるための通過儀礼だ。

あと、日本語字幕ではピエロと出るけれど、英語ではクラウンと言っている。パンフレットの座談会で風間賢二も触れている。

「日本語の字幕ではピエロになっているけれど、あれ厳密にはクラウンだからね。クラウンとピエロは違うんです。ピエロは泣いている道化者だけど、それをイジメるのがクラウン。ボケとツッコミのような感じ。」

なるほど、勉強になる。日本ではクラウンという言葉が定着しなかったのは何故だろう。

子どもたちがみんな可愛くて上手い。でも、やっぱりジョージーの兄ビルを演じたジェイデン・リーバハーがいちばん気に入った。弟を失った悲しみ、弟に化けて現れるペニーワイズへの怒り、ともにビンビンこちらに伝わってくる。肥った読書家の少年ベン(ジェレミー・レイ・テイラー)のエピソードも泣ける。成就しそうもない初恋の思いに涙。紅一点のベバリー役のソフィア・リリスも可愛いし、父に性的虐待されている(らしい)少女という難しい役をこなしているし、非常に強靭さを感じる。
あと、ペニーワイズ役のビル・スカルスガルドの怪演に拍手。素顔はまるで窺えないけれど。

ラストで子どもたちが自分の手を瓶の欠片で傷つけて血を流し、その手と手が触れることで友情を誓い合う、みたいな儀式をやるのだけど、実はここがいちばん正視に絶えなかった。こういうの、生理的に駄目なのよ。

映像的には、子どもたちが浮かんでいるシーンが美しくて恐ろしくて良い。下水道なのに空中に浮かんでいる、というヴィジュアルが異様すぎて凄い。

何年後になるか、第二章も楽しみ。その前に原作読まなきゃ。





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