岬兄悟を読む2『半身一体』

小説(短編集)『半身一体』岬兄悟著 ハヤカワ文庫JA 1992年1月31日発行
2017年10月28日(土)読了

(注意!)ネタバレあり

短編集。短編9編収録。
ショート・ショート集『感情伝染』(ハヤカワ文庫JA)が、面白かったので、もう一冊、岬兄悟の短編集を読んでみた。『感情伝染』の作品は、「ホラーハウス」という怪奇少女コミック誌に掲載されたものだったが、こちら『半身一体』は、「SFマガジン」「SFアドベンチャー」「奇想天外」などのSF誌に掲載されたもので、やや大人向け、SFマニア向けか。ただ、『感情伝染』のように女性主人公ばかりというわけではないが、主人公が異常な事態に遭遇するという設定は似ている。
いくつか、気に入った作品の感想を。

「筍族」
公園の地面から生えている半透明の犬や猫を発見した「ぼく」は、それらを自宅に持ち帰り、育てている。それらは、どうやら「ぼく」以外の普通の人間には見えないらしい。「ぼく」はそれらを「筍族(たけのこぞく)」と呼んでいる。そして、ある日、若い人間の女性が生えているのを見つけた「ぼく」は彼女を掘り起こすと、家に連れ帰り、植木鉢に植えた。やがて、半透明だった彼女に色が付き始めた・・・。
幻想譚。全然内容は違うのだが、何故か川端康成の『片腕』という小説を思い出した。
この世のものではない存在との恋愛小説とも受け取れるが、実は肝心な時に彼女は「ぼく」ではない別の男の名前を呼ぶ。実は、この世のものだったのか。そして、ラストの締めくくりがまた不条理である。
傑作。

「振り向けばユートピア」
突然始まった「ユートピア幻覚現象」によって、社会は混乱に陥る。自分のうしろにユートピアのヴィジュアル・イメージが広がる、肩ごしに振り返ってその世界を見ていると、その世界に引き込まれ、今いる現実世界から消滅してしまう。そんな消滅した人々が、三十万人以上にもなったとき、主人公の「おれ」も別世界に引き込まれてしまう。だが、そこは振り返ったときに見たユートピアではなく、荒涼たる不毛の大地だった。みんな、何者かの策略に嵌ったのか。
ラストに見事なオチが決まってオシマイ。面白い。

「分断生活」
ある日突然、世界は「男の世界」と「女の世界」に分断した。男側(女側)から見れば、女(男)が世界から消滅したような状態だ。だが、片方がどこか遠く離れた異世界に行ったのではなく、依然としてそばに男(女)はいるのだが、女(男)がその姿や存在を見たり感じたりできなくなったのだ。そして、子どもたちや老人はその両方の世界にまたがって存在している。何故、そのような現象が起きたのかの説明はなし。
男女分断減少で一番危惧されたのは、子孫が生まれないこと、何しろ、男女が見えないし、感じないし接触できないのだから、セックスしようもない。ところが、分断から2年が過ぎたころ、女性たちが妊娠し始めた。セックスしない、できないのに何故?この答えもない。
そして、生まれたのは、両性具有の赤ん坊であった。これこそ、男女分断後の世界に出現した新人類である。
発想が面白いし、合理的説明とか欠片もないし、シリアスかと思えば、単なるほら話みたいでもあるし、良く出来た作品。

「半身一体」
『転校生』『君の名は。』を始めとして、男女入れ替わりモノは数多くあるが、これは入れ替わりの変種、いわば男女合体もの。まあ、いろんなことを考えるものである。感心した。
ある日突然、「ぼく」は体の左半分は男の「ぼく」で右半分は女性「淳子」になってしまった。この異常事態を打破するために色々考え試した末、例えば「ぼく」が眠るとその瞬間に「ぼく」の姿が消え、もう丸ごと「淳子」の体になることに気付き、その手を使って日々の生活を過ごすことにした。昼の仕事をしている「ぼく」が昼を生き、夜の仕事をする「淳子」が夜を生きる。だが、やがてそんな生活も破綻が・・・。
そう来ましたか、というオチが面白い。
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