『眩(くらら)~北斎の娘~』

『眩(くらら)~北斎の娘~』原作:朝井まかて 脚本:大森美香 演出:加藤拓 特殊メイク:江川悦子 音楽:稲本響 出演:宮﨑あおい 松田龍平 三宅弘城 西村まさ彦 麿赤兒 野田秀樹 余貴美子 長塚京三
2017年9月18日(月)19時30分~20時45分放送 NHK

葛飾北斎(長塚京三)の娘・お栄(宮﨑あおい)を描く単発ドラマ。久々に見応えがあるドラマで堪能した。何よりも宮﨑あおいが素晴らしい。かつての美少女がすっかり熟して美しくなり、演技力は前にも増して卓抜している。このドラマでは、離縁して出戻ってきたまだ若い頃(1824年)から年老いた頃までさまざまな年齢を演じて見せる。特殊メイクの江川悦子のおかげもあるが、それに加えて演技力で「年齢」を表現して鮮やか。それでいて美少女の頃の可愛さがずっと残っているのが凄い。目尻の皺までもが愛(いと)おしい。
今までの宮﨑あおいが演じた役にはあまりなかった男勝りの伝法な言葉遣いも逆に可愛くて堪らない。

この作品のテーマは、光と影。お栄も言っているように、お栄が影ならば、父・北斎は光。その光輝く父もかなりの比重で描かれている。芸術家とは何たるものかを指し示すのはこの父の言葉。

「ああ、うまくなりてえ。天があと10年・・・、いや5年、命をくれるなら俺は本当の絵描きになってみせる。きっと、なってみせる。」
これが90歳の老人の言葉だから重みが違う。
あるいは、

「三流の玄人でも一流の素人に勝る。何故だかわかるか?こうして恥を忍ぶからだ!己が満足できねえもんでも歯あ喰いしばって世間の目にさらす!悔いてる暇があったら、とっとと次の仕事にかかれ。」

ちょっと前の言葉と矛盾する様でもあるけれど、両方同じことを言っている様でもある。
北斎を演じる長塚京三が素晴らしい。時に鬼気迫る感じだし、どこかユーモアもある。その多様さ。

滝沢馬琴役でほんのちょっと出て来る野田秀樹もいい。最初、後ろ姿だけで顔を見せないのに、その声を聴くと、「ああ、野田秀樹だ」とすぐわかる。そんな人は野田秀樹くらいしかいない。
病に倒れた北斎を手厳しく叱咤激励するという儲け役。

全体的にもっとドラマとして盛り上げるのも可能だが、それをしていない。北斎の奇人変人ぶりを描くとか、お栄と
善次郎(松田龍平)の関係をもっとじっくり描くとかやりようはあるのだが、それをしていない。そこがいい。全編にわたって落ち着いたペースで話を進め、お涙頂戴の愁嘆場もなしで、淡々とすらすらと描いていく。善次郎の野辺送りのシーンなどその典型。如何様にも盛り上げられるものをしていない。それが却って心に残る。

北斎先生と弟子たち(お栄も含む)の絵の制作風景が、現代の漫画家とアシスタントのそれと酷似していて思わず笑ってしまった。

セットも見事。北斎の仕事場兼住居の小汚さ。芸者が三味線を弾いたりする御茶屋の絢爛たる美しさ。その対比。御茶屋の天井が見えるのも感心した。ドラマの中のセリフでいえば、「本意気」という感じ。

演出の加藤拓を始めとするスタッフ、宮﨑おあいを始めとするキャスト、まさに玄人の仕事をしたと言えよう。
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