『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 上下巻』その1

ノンフィクション『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 上下巻』2011年 ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳 河出書房新社 2016年9月30日初版発行
2017年8月13日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

話題のベストセラー。とかくこういう本は手が伸びにくいのだが、たまにはいいか、と買って読んでみた。
非常に面白かった。なるほど、ベストセラーになるのも納得、である。

タイトルのサピエンスとは、もちろん現生人類ホモ・サピエンス(以下の文章では、この本に倣ってサピエンスと表記する)のこと。20万年前に現れたこの人類種が歩んできた歴史を辿っていくのがこの本である。
先ず、驚いたのは、異なる人類種が複数同時期に存在したということ。何となく、ネアンデルタール人が死滅してからサピエンスが出現したと思っていたが、どうやら両者の時間は被っているようだ。いや、それどころか、ネアンデルタール人とサピエンスの間には性交渉があって、現在の人類は両者の混血の子孫ではないかというのだ(全部ではないが)。これが「交雑説」。それに対立する「交代説」は、両者が交わることなく、子孫も作らず(作れず)、まったく別個に存在して、やがてネアンデルタール人は死滅した。あるいはそれは、サピエンスによる大量虐殺の結果なのかもしれない。勿論、「交雑説」「交代説」のどちらが正解か答えは出ていない。分からない。
このことに限らず、サピエンスの歴史において分からないことは山積みである。その辺、著者は分からないことは分からないと書き、いくつかの「説」を並べて紹介するやり方をとっている。

サピエンス以外にもネアンデルタール人などの人類種がいたのに、何故、サピエンスだけが生き延び、巨大な力を持ち、繁栄して行ったのか。著者は、それは「虚構」の力によるものだという。
7万年前にサピエンスに新しい思考と意思疎通の方法が登場した、それを「認知革命」という。サピエンスは、言語を使う能力を獲得した。しかもそれは、現実にあることを情報として伝達する能力にとどまらず、全く存在しないものについての情報を伝達する能力なのである。

「伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。」(上巻39ページ)

これらは、現実には存在しない「虚構」である。この「虚構」によって、サピエンスは大きな集団を形成し、繁栄して行った。宗教も国家も貨幣も人権も法律も正義も全て「虚構」なのだ。

「想像上の現実は嘘とは違い、誰もがその存在を信じているもので、その共通信念が存在するかぎり、その想像上の現実は社会の中で力を振るい続ける。」(上巻49ページ)

原価が非常に安い紙切れが、「紙幣」として流通して誰もそれを疑わないのは、その「共通信念」ゆえだろう。非常に面白い考えた方だ。でも言われてみればその通り。どんなに違う国家体制でも異なる宗教でも基盤となる「虚構」は同じだ。

サピエンスは、最初は狩猟採集民として生活していた。自然の中で動物を狩り、植物、果実を獲り、生きてきた。土地に定住することに拘ることはない。獲物が乏しくなったら移動すればいい。従って、土地を巡って別の集団と争うことも滅多にない。イザコザが起きそうだったら別の土地に行けばいい。働く時間も長いものではないし、決まったルールもない。
ところが、サピエンスの社会に農業革命が起きた。1万2000年前のことだ。これによって、「植物の栽培化と動物の家畜化。永続的な定住。」(上巻10ページの年表)が確立する。もう苦労して動物も狩ることもないし、植物を探すこともない。どちらも自分たちの土地にある。だが、そうなると、別の苦労がサピエンスに襲いかかる。
土地を管理し、植物を育て、収獲するとなると、労働時間は飛躍的に伸びる。気ままに狩りをするってわけにはいかない。農地を維持していくことの大変さ。毎年毎年豊作ならいうことないが、当然ながら不作もあれば、旱魃もある。やーめた、と放り出して、今さら狩猟採集民に戻るわけにはいかない。
家畜がいるということは、家畜がもたらす感染症の心配もある。狩猟採集民だったころは、サピエンスのそばにいた動物と言えば犬くらいだったのに。

苦労はおそらく増えたが、それでも農業革命によってサピエンスは飛躍的に進歩した。自給自足の狩猟採集民がその日暮らしで未来のことを思い描かなかったのと対照的に農耕民は先のことを考えざるを得なかった。
先のことを考え、自分が消費する以上のものを生み出し、当然来るであろう不作の年のために備蓄しなければならなかった。

「そして、不作の年は遅かれ早かれ、必ず訪れた。不作の年が来ないと決めつけて暮らしている農耕民は、長くは生きられなかった。」(上巻131ページ)

つづく
サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
河出書房新社
ユヴァル・ノア・ハラリ

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