『手塚治虫恐怖短編集』 消滅の世界、その他の世界

マンガ『手塚治虫恐怖短編集』

(注意!)ネタバレあり
 
(つづき)
「悪魔の開幕」1973年
政府要人を劇場で暗殺するという計画だったが、それが失敗に終わる。その裏にはある企みがあった。
ヒッチコックの『知りすぎていた男』みたいな暗殺話に捻りを加え、さらにオチが用意されている。ミステリとしてよく出来ているし、シニカルな味もなかなかいい。

「大暴走」1969年
原子力で動くコンピューター制御のロボットタンカーの試運転の旅。その船の乗客のなかには、さまざまな思惑を秘めた人々がいた。
この時代に原子力タンカーという発想が凄い。しかもコンピューターには死んだ女性の頭脳が人工培養され、コンピューターはその女性の意志通りにロボットタンカーを動かすという、のだからますます凄い。
話も紆余曲折があり面白い。

「時計仕掛けのりんご」1970年
地方の小さな町で起きた異変。いつの間にか交通は遮断され、町から出られなくなるが、住民たちは無気力でこの事態でも何の行動も起こさない。実はこれは自衛隊の一部が企てたクーデターの予行演習だったという話。住民は、一か月前から米に混ぜた特殊な薬のせいで無気力・無抵抗になっていたのだ。唯一、それを免れた男がクーデター阻止に動き出す。徒手空拳でごく普通の男が考え出した対抗策が面白い。
作品としてもポリティカル・フィクションとしてよく出来ている。

「アトムの最後」1970年
ロボットが人間を支配しているディストピアの話。一人の若者が恋する女性と共にその社会から脱出を図り、博物館で眠る伝説のロボット・アトムを起こし、自分たちに協力するように頼むのだが・・・。
アトムがゲスト出演した作品。タイトルこそ「アトムの最後」となっているが、実はアトムの最後は不明。それとは別のオチが附く。

「レボリューション」1973年
出産の際に意識不明になった妻が目を覚ますと、夫に対して「あなたなんか知らない」「私は雄谷やす江ではなく、堀田美奈子だ」と言う。妻は記憶喪失なのか、別の人格が入り込んだのか。夫はその謎を解くべく行動するのだが・・・。
オチが素晴らしい。この手を使った作品は他にもあるような気がするが、それでもアッと言わせる。


手塚治虫恐怖短編集(3)消滅の世界編 (講談社漫画文庫)
講談社
手塚 治虫

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 手塚治虫恐怖短編集(3)消滅の世界編 (講談社漫画文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック