高野慎三『貸本マンガと戦後の風景』(論創社)を読む

漫画評論『貸本マンガと戦後の風景』高野慎三著 論創社 2016年11月20日初版発行
2017年1月1日(日)読了

ぼくは、リアルタイムで貸本マンガには間に合わなかった世代なので、逆に興味が湧いて買って読んでみた。去年11月に出たばかりの新刊である。
1940年生まれの著者が、貸本マンガの歴史を辿り、さまざまな作品を紹介・研究・評論している。それに加えて、少年時代からの貸本マンガとの関わりを記し、著者が観てきた戦後の風景も克明に伝えてくれる。お堅い評論集と言うにとどまらず、どこかノスタルジックで柔らかい感じがする。著者は戦後を描いた『ALWAYS/三丁目の夕日』という映画に否定的なのではあるけれど、この本もまたあの映画と同じ「きれい事」に思えてしまうのが面白ところだ。貸本探索で東京のみならず地方まで出歩くさまが何とも幸せそうで読んでいて楽しくなる。

貸本マンガを俯瞰で観て全体的に捉えて書くという事はしていない、というかできないのだろう。貸本マンガについてはどうも分からないことが多すぎる。当事者の証言も色々と食い違うことも多い。その辺の細かい誤謬を正すこともこの本でなされていて非常に興味深く読んだ。高々、半世紀前のことなのに、貸本マンガの出版社、およびそこで描いていたたくさんの漫画家のことはビッグネームを除いては分からないことが多い。
「いまでは確かめようもないが」「と、決めつけるわけにはいかないのが、貸本マンガの世界であるが」などと言う文言が頻発するのもやむなしか。

その例外的なビッグネームの作家についての文章は結構熱が入っていて読み応えがある。白土三平、水木しげる、つげ義春、つげ忠男などは特に著者の思い入れの強さが伝わって来る。やっぱり、評論というのは貶すよりも褒める方が書く方も読む方も気分が乗って面白い。これらの漫画家の作品を読んでみたい、読み返してみたいという気になる。
貸本マンガと戦後の風景
論創社
高野 慎三

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