『ミュータントサブ 第Ⅰ・Ⅱ巻』 白い少年の闇の叫び

マンガ『ミュータントサブ 第Ⅰ・Ⅱ巻』石ノ森章太郎著 双葉文庫名作シリーズ 1999年11月25日第1刷発行
2016年10月29日(土)読了

(注意!)ネタバレあり。

石ノ森章太郎が、1965年から1967年まで雑誌に掲載された短編20編を収録したもの。ミュータント(突然変異)の超能力少年サブを主人公にしている。ただ、小学館と講談社という二つの出版社の「少年サンデー」「少年マガジン」「ぼくら」「冒険王」などの雑誌にバラバラに掲載されたものなので、こうやってまとめて読むと主人公のキャラ設定にもストーリーにも一貫性が欠ける傾向があることに気付く。どういう方向性で描きたかったのかがよく分からない。非常に雑駁であり、作品の内容も出来不出来が激しい。そこが興味深いとも言えるが。

何故、サブはミュータントとして生まれたのか。最初の「ミュータントサブ誕生」によれば、20年前、まだサブが生まれない時、彼の母親がUFOの爆発と言われている事件の際に怪光線を浴びたためだと説明されている。そして、サブが成長して少年になった時に交通事故に遭い、その際に相手の自動車に乗っていた少女マリの血液が輸血されたことによってサブの超能力が覚醒する。マリの母親もまた20年目にその爆発の怪光線を浴びていたのだ。どうやらそれがミュータント誕生の原因らしい。それに気づいたサブは今度は自分の血をマリに輸血する。これによってマリもまた超能力者になる。
20年前の事件はただ説明されるだけで回想シーンなし。以後の話でもそれに触れるエピソードはなし。そういうところはすっぱり割り切っているのがむしろ気持ちいい。
サブとマリが、テレパシーで会話するシーンはこれ以降も出て来るが、いずれもなかなか良いシーン。何しろ50年前の少年誌掲載だから、少年少女の恋愛に発展しないが、どんなに熱愛している恋人同士よりも親密に感じられる。形容詞や比喩ではなく本当に「心が通じ合った仲」なのだから。
ずっとこの調子でやってくれたら良かったのにどういうわけかマリが出て来ない作品も多い。別にマリに何かあったわけでもないのに。もったいないなあ、と今さらながら思う。

ここで幾つか印象に残った作品について感想を書いておく。

「白い少年」(1966年)
これ、リアルタイムで読んでいる。「週刊少年サンデー」で。小学校低学年の頃、8歳だ。8歳で読んで感動したものが今読んでも感動するっていうのが凄いや。日本マンガ史に残る名作だと思う。
何処からか聞こえて来る「心の声」に導かれてある屋敷にやって来たサブとマリは、その屋敷の地下深くで白い少年に遭遇する。少年は、昔、狂った科学者によって実験のため地の底に閉じ込められた人間たちの子孫だった。少年は、いま、嘆き悲しんでいた。一緒にいた少女エルが死んだから。いや、正しくは彼は死を理解できないから、エルがどうなったのか分からないのだ。やがて少年はマリをエルだと思い、追いかけてくる・・・。
絶望的でまったく救いのない物語。仲睦まじいサブとマリと対比される少年とエルの哀れさ。マンガとしてのコマの使い方、吹き出しの使い方の絶妙な上手さ。そしてラストの見開き2ページの何という迫力。見事な締め括り。

「闇の叫び」(1967年)
絶望的でまったく救いのない物語、といえば、こちらも相当のもの。ここに出て来る少年は精神病でしかも超能力が使えるので、村人たちは恐怖に駆られて彼を殺して土に埋めた。だが、少年は、少年の霊魂は、肉体が死んでもなお、超能力を使い、村人を襲う。その少年にサブは対峙するが・・・。
旧弊で閉鎖的な村人を悪人にしてしまうのはちょっと引っかかるが、話はよく出来ていて面白い。死んだあとでも超能力で災いをなすという点では『リング』の貞子の先輩か。て、言うか、怪談ものの定番ともいえるな。

「雪と火の祭り」(1966年)
タイムスリップもの。時代改変もの。ミュータントサブでこういうネタをやるという事自体が冒険的で面白い。これもリアルタイムで読んで感心した覚えがある。時代改変と言っても大仰なものではなく、ただ祭りの伝承の内容が変わっているだけという割と地味目なアイデアがむしろ好き。

「ロボット城」(1965年)
簡単にいえば、マッドサイエンティストが巨大ロボットでダムを破壊する話なのだが、このロボットを「鉄人28号」みたいにリモコンで操作するのではなく、ロボットの頭部に人間が入って操縦する方式なのが興味深い。石ノ森のアシスタントだった永井豪の「マジンガーZ」(1972年)より7年早い。

「スパイハンターサブ」(1966年)
何故かサブが超能力を使って敵スパイをやっつけるスパイハンターになる話。「秘密諜報員0号」(1965年)では、「スパイになってくれ」という要請をキッパリ断ったサブがちゃっかりスパイになっているってどういうわけ?この辺がどうも全体的に首尾一貫していないいい加減なところ。
ちなみにこの話はスパイよりも恐ろしい地球外生命との戦いになっていくのが意表を突く。

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