『相棒15 第3話 人生のお会計』 生きる

ドラマ『相棒15 第3話 人生のお会計』脚本:櫻井智也 監督:兼﨑涼介 出演:水谷豊 反町隆史 鈴木杏樹 川原和久 山中崇史 山西惇 浅利陽介 石井正則 渋江譲二 十貫寺梅軒
2016年10月26日(水)放送 テレビ朝日

(注意!)ネタバレあり。黒澤明『生きる』、クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』のネタバレもあり。

冒頭、一人の男が医師に「癌で余命半年か1年」と宣告される。
まずこのシーンで「ああ、黒澤明の『生きる』だな」と気付く。正確に言えば、『生きる』では医師は病名も余命も告げないのだが患者の方が察知してしまうのではあるが、いきなり初っ端から一人の男が置かれている状況をズバリと見せてしまうやり方は一緒。
『生きる』では、役所に勤める男(志村喬)は、町に公園を作るために残り少ない命を使うことにする。一方、こちらの生命保険会社勤務の男・谷中(石井正則)は、ある老人の復讐のために命を投げ出そうとする。
両者とも人生の最期にせめて人の役に立ちたいという気持ちは同じだが、後者は明らかに犯罪である。『生きる』の初期設定をまさか刑事ものドラマに再利用するとは。何でも応用が大事ということか。
応用といえば、クライマックスで谷中が仕掛けるトリックは、クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』のクライマックスのトリックと酷似している。つまり、自分が相手を殺すと見せかけて相手に殺されることによって、相手を刑務所送りにするというあれだ。
黒澤明とクリント・イーストウッドという随分とビッグネームからネタを頂いたものだが、不思議に嫌な感じがしない。むしろ遊び心が感じられて面白い。
それはひとえに谷中を演じる石井正則のお蔭だと思う。小男でどう見ても風采の上がらない彼が、自分の計画通りに事を運ぶために入れ墨を入れたり、暴力団事務所に拳銃を買いに行ったり、ホストクラブでシャンペンタワーにカネをつぎ込んだりのトンデモナイ行動をとるのが実に面白い。
石井正則は、『古畑任三郎』の後期に刑事としてレギュラー出演していたのが今でも印象的。あれで上司である古畑に鍛えられたせいか、今回の犯罪計画もなかなか見事。もっとも最後には杉下右京に真意を見抜かれてしまうのだが。石井正則をこの役に起用したこと自体が粋な遊びと言えるだろう。
ラストは、2時間ドラマでお馴染みの崖の上でのシーン。そこから飛び降りて自殺しようとする谷中に杉下右京が言う長広舌が凄い。

「ここ(崖)で自殺をすれば、この場所を大切にしている人たちを不幸にすることになります。あなたは、美しい死を選んだつもりかもしれませんが、周りの人たちにとっては、傍迷惑な死でしかありません。駅のホームで電車に飛び込むのと何が違うのでしょう?いいですか、谷中さん。あなたの命は決してあなた一人のものではありませんよ!
あなたがここで死なないというだけでも人のために生きたという事になると思うのですが。」

人里離れた断崖絶壁であってもそこを大切にしている人が居る、というのは目からウロコ、実に説得力がある。これからドラマで崖を見る時にこの言葉をかみしめて見よう。

まだこれだけの傑作を生み出すのだから『相棒』も大したもの。元出演者逮捕とかで色々騒がれてお気の毒だが、『相棒』はやっぱり面白い。


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