新海誠を読む1『小説 君の名は。』 大事な人。忘れちゃだめな人。忘れたくなかった人。

『小説 君の名は。』新海誠著 2016年6月25日初版発行 2016年8月15日8版発行
2016年9月3日(土)読了

(注意!)ネタバレあり。アニメ『君の名は。』のネタバレもあり。

アニメ映画『君の名は。』の監督が、映画製作と同時進行で執筆した小説版。原作と言っていいのか、ノベライズなのか、微妙だと著者もあとがきで書いている。
ともあれ大まかなストーリー展開はアニメ版とほぼ同じと言っていい。ただアニメ版における圧倒的映像美は、文章では到底表現不可能である。そこで、新海誠は小説ならではの手法でこれを書いている。
これは主人公である瀧、三葉それぞれの一人称で語られた物語なのである。このやり方だと瀧と三葉が考えたこと感じたこと見たこと体験したことしか描けないという制約が出て来るが、そこがまた良い点でもある。二人に話を凝縮させることができるから。アニメ版もこれに準じているが、映像で一人称というのは難しいので、極力二人に焦点を当てるやり方である。
小説は一人称にすることによって、二人の内面が吐露されることになるがそれが、キャラ造形に微妙な変化を生じさせて、アニメ版とはキャラの性格が違ってきている。
この点については、著者の新海誠自身も指摘している。「三葉はけっこう能天気な子だったんだなあとか、瀧は女性に対して本当に駄目な男子だなあとか。」と。確かに。
そういう差異を比較してみるのも楽しみの一つだと思う。

ストーリー展開は、小説・アニメともにほぼ同じ。細部がいくつか変えられているが、その辺はまあ、表現法の違いということで。
ただ、一つだけ、クライマックスが大いに違うことに気付いた。これだと、この作品に対する解釈がガラッと変わってしまう。

(再び注意!もしくは警告!)小説、アニメのクライマックスの重要シーンについてネタバレしています。

アニメでは、町長でもある父に彗星落下の被害から町民を救うために避難するように再度説得に行く三葉が描かれる。道に倒れる三葉。意識が途切れる。目覚め起き上がって、走り続けて町役場に行く。町長室には町長と妹らもいる。そこでカットが変わる。そして、そのあとで町民避難がされたことが新聞記事などで説明される。どうやら説得が功を奏したようだ。だが、アニメでは説得シーンがない。ここがアニメを観た時に引っかかった。面倒臭いシーンは描かない方針なのかと。まあ、映画に流れからいうと、ここであの頑固そうな父親を説得するシーンを入れるのはかったるいのは確かだ。と、思っていた。
ところが、小説版では、説得に行く三葉。道に倒れる。意識が途切れる。目覚め、起き上がる。で、場面転換。避難成功。三葉が町役場で父らと会うシーンなし。これどういうことなんだろう。
アニメだと、三葉の説得で避難できたと、説得シーンもないのにそう解釈したが、実は違うんじゃないかと思えてきた。これってパラレルワールドではないのか、と。
一つは、彗星で町民が死ぬ世界。もう一つは、三葉の説得で間一髪、町民が避難できた世界。そして、もう一つは新聞が報じていたように、その日たまたま避難訓練が予定されていて町民がすんなり避難できた世界。この三つ目の世界に三葉はやって来たのではないか。というか、三葉の強い思いがそういう世界を作ったか。
そうでないと、あれだけ切迫していて、今さら説得しても時間的に町民避難は間に合わないだろう。
アニメの方も面倒臭いシーンは描かないのではなく、敢えて描かないことによって含みを持たせる意味があったのか。
ま、これはぼくの解釈であってそういう結論はどこにも書いていない。ただ、三葉の説得で町民が避難できたとも書いてはいない。面白い。小説版を読んで良かった。再度アニメを観る時にこの辺により注目して観てみよう。
小説 君の名は。 (角川文庫)
KADOKAWA/メディアファクトリー
2016-06-18
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