新海誠を見る1 『君の名は。』 現役女子高生仕込みの巫女の口噛み酒が飲みたい

アニメ(映画)『君の名は。』2016年 日本 制作:コミックス・ウェーブ・フィルム 配給:東宝 原作・脚本・絵コンテ・編集・監督:新海誠 作画監督:安藤雅司 キャラクターデザイン:田中将賀 音楽:RADWIMPS 声の出演:神木隆之介 上白石萌音 長澤まさみ 市原悦子 成田凌 悠木碧 谷花音 島﨑信長 石川界人 上映時間107分 ビスタビジョン カラー 
2016年8月26日(金)公開
2016年8月26日(金)鑑賞 18時40分の回 TOHOシネマズ西新井スクリーン5 座席D列26番 入場料1800円(当日券) パンフレット720円

(注意!)ネタバレあり。

映画館で頻繁に見かけた予告編で得た予備知識だけで観に行った。予告編だと、大林宣彦の名作『転校生』みたいな「少年少女の体の入れ替わり」を描いたコメディに思えた。「今さら新鮮味がないな」という気がした。だけど、新海誠監督の旧作『ほしのこえ』『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』を立て続けに観て、「この人なら何かやってくれるだろう」という期待が高まり、公開初日に映画館に駆けつけたわけだ。

映画は、もう最初の方で主人公の瀧(声:神木隆之介)と三葉(声:上白石萌音)の入れ替わりが行われる。瀧(たき)は東京に住む少年、三葉(みつは)は田舎に住む少女。二人に全く面識はないし、何の関係性もない。遠距離に住む二人の入れ替わりなのである。ここで不思議なのは、最初の入れ替わりが起きたその日のことが映像では描写されないことだ。シーンは次の日になり、前日のことが周囲から語られるのみ。コメディだったら、ここの最初の衝撃による二人のあたふたぶりを面白おかしく描くはずだ。そこがスッポリ抜け落ちている。そのあとで二人の入れ替わりから生じたちぐはぐぶりが描かれはするもののさほどオーバーアクションではないために笑いが盛り上がらない、ここでまた、「どうもありきたりで新鮮味がない」という感想が湧きあがる。正直言って、二人の入れ替わりを描いた前半は退屈だった。
ところが、二人の入れ替わり現象が起きなくなって、瀧が現実の三葉に会いに行くあたりから予想だにしなかったストーリー展開になる。ああ、このあたりのネタバレを事前に知らなくて良かったなあ。もし知っていたら面白さ半減だった。単なる「入れ替え」コメディだと思っていたらとんでもない真相が明かされ、とんでもない事態になる。

(注意!というか警告!)重要なことをネタバレします。

実は三葉は、3年前の彗星落下によって住んでいる町が壊滅した際に死んでいたのだ。三葉は3年という時間を超えて瀧と出会ったのだ。「体の入れ替わり」という大ネタ以外に「時空を超えた恋」という大ネタを重ねるとはかなり思い切ったものだ。単なる入れ替わりではなく、少女の命を救うための入れ替わりだったとは。
瀧は壊滅した町を見下ろす場所で3年前の生きている三葉と出会う。瀧は三葉に彗星落下による惨事が迫っていることを告げる。それを知った三葉は友人と共に町を救おうと動き出すのだが・・・。
前半のコメディタッチから一転、シリアスに描かれる意外な真相とそれを知った瀧の苦悩と必死の行動が描かれる中盤から、三葉が疾走するサスペンスフルなクライマックスと非常に良く出来た構成である。
ただ、三葉の父である頑固そうな町長が、よく説得に応じたなという思いは残るし、発電所爆破は不問になったのだろうかとも思う。ま、あまりその辺を追求する気にもならないが。

紆余曲折あるよく出来たストーリー展開に加えて、主人公である瀧と三葉の心情がダイレクトに伝わって来るところが素晴らしい。決してお涙頂戴の展開ではないのだけれど、この二人が繊細に描かれているから、つい思わず涙を流してしまう。ぼくのようないいトシした中年男が。

新海誠監督の十八番であるところの情景描写の巧さ、鮮やかさ、美しさはまさに彼の真骨頂。東京、田舎町、そしてその壊滅した跡地いずれもが極めて精密にリアルに描かれる。時には、怖ささえ感じさせるほどに。

エロティックな部分もある。巫女となった三葉が執り行う儀式「口噛み酒」だ。確かに四葉(声:谷花音)の言うように「生写真とメイキング動画をつけて現役女子高生仕込み」として売り出せば、大ヒット間違いなし。て、いうか、ぼくも是非飲みたい。小学生四葉の仕込んだ分も含めて。
これが単なるエロいシーンではなくて、後で生きてくるシーンになっているのが凄い。

声の出演の神木隆之介、上白石萌音、共にいい。如何にも純粋無垢な高校生二人がそこにいるという感じで。

ラスト。全てを忘れてしまった二人が、出会った瞬間、「この人が私が探し求めていた人だ」と分かるのがいい。ここに至って、タイトルの『君の名は。』というのが最高に生きる。

『シン・ゴジラ』同様、3.11以降の映画だなあ、という思いが強くした。『シン・ゴジラ』は壊滅的な被害からどう立ち上がっていくかの話で、『君の名は。』は壊滅的な被害をなかったことにしたいという話。こちらの方が夢物語ではあるけれど、どちらも「祈り」の物語であることは確かだ。
夢を笑うなかれ。これを見た少年少女が最後まであきらめない気持ちを知ることできれば幸いである。
傑作。
新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド
KADOKAWA/角川書店
2016-08-27
新海 誠

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック