『シン・ゴジラ』 日本は死なないわ、私たちが守るもの

映画『シン・ゴジラ』2016年 日本 東宝 脚本・編集・総監督:庵野秀明 監督・特技監督:樋口真嗣 音楽:鷲巣詩郎 伊福部昭 出演:長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ 高良健吾 大杉漣 柄本明 余貴美子 市川実日子 國村隼 平泉成 松尾諭 塚本晋也 高橋一生 手塚とおる 黒田大輔 光石研 津田寛治 古田新太 松尾スズキ 諏訪太郎 小林隆 矢島健一 前田敦子 上映時間119分 シネマスコープ カラー 
2016年7月29日(金)公開
2016年7月30日(土)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン5 8時20分の回 座席C-26 入場料(当日券)1800円 パンフレット850円

(警告!)『シン・ゴジラ』のネタバレ、オチバレしています。

公開前に一切の情報に触れないように(予告編は見たけれど)注意してなるべく白紙の状態で映画に対峙した。それが功を奏したのか、非常に面白く観ることができた。
だが、正直言ってこういう映画になっているとは思ってもみなかった。まさに「誰も見たことのない」ゴジラ映画であった。

この映画のゴジラは、全く未知の「巨大不明生物」として登場する。『ゴジラ』(1954年)を始めとするゴジラ作品とのストーリー的なつながりは全くない。ま、しいて言えば、「検索して一つだけヒットしました」というあれが、第1作を思い起こさせるくらいか。過去を断ち切ってここからまた新しいゴジラストーリーの始まりなのである。

冒頭、東京湾上に漂流している無人のプレジャー・ボートの発見から始まり、すぐさま東京湾に異常な事象発生という流れになる。余計な前置きなしでサクサク進む。やがて、巨大不明生物の存在が確認され、それが、東京湾から上陸する事態となる。上陸して初めて巨大不明生物の全体像が明らかになるのだが、それがなんだかおかしな顔、おかしな体形の生物なのである。
ここでいきなり凄いゴジラが観られると期待したぼくは思い切り肩すかしを食らう。「あれは、ラドンにおけるメガヌロンみたいな存在かな」と思ってい観ていると、意外や意外、その生物こそゴジラであってその第一形態だったのだ。この話の展開は上手い。ゴジラを観に来た人間に仕掛けたギミックが成功している。ここで既に脚本の庵野秀明の策に嵌った感あり。

この映画は、会議の映画である。昔、「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」という名言を吐いた人が居たが、この映画は会議室が現場なのである。巨大不明生物がもし日本に出現したら、政府、各官庁はどう対策を立て、どう対処していくのかを微に入り細を穿つ感じで執拗に描いて行く。そこがかつてない映画という気がする。
政治家、閣僚、自衛隊幹部、学者などが侃侃諤諤やり合うさまは実に面白い。一度聞いただけではわからないような長い法律名とか、学術的な専門用語が飛び交って映画を観ている方は煙に巻かれる。それが意外に快感。何というか、知的好奇心をくすぐられる。もう一度見て確かめよう、とか関連する本を読んで調べようという気持ちになる。見事に庵野秀明の術中である。

この映画は、自衛隊の映画である。今までここまで自衛隊がカッコよく美しく描かれた映画があっただろうか。しかもどこかフェティシズムを感じるのである。戦車、戦闘ヘリ、戦闘機を写した映像が何だかエロティックに見える。軍事オタクの夢が結実したと言えようか。
だが、第4形態にまでなったゴジラは簡単にやっつけられない。首都攻防戦「タバ作戦」でありったけの通常兵器を駆使してもダメで自衛隊は敗れ去る。単なる自衛隊賛美には決して終わらない。
ここがあるから、クライマックスにおける「ヤシオリ作戦」のシーンがより鮮やかに見えて来る。

それにしても「ヤシオリ作戦」とは何というネーミングか。エヴァンゲリオンを観ている人は誰もが「ヤシマ作戦」を思い出すだろう。遊んでいるなあ、庵野秀明。そして何というファン・サービス。サービス、サービス。

この映画は、怪獣映画である。ぼくが怪獣映画で観たいのは、破壊と殺戮である。それは子どもの頃から変わらない。ぼくが生まれ育ち今も住んでいるこの現実の東京という都市が映画という虚構の中で破壊され、人々が死んでいくのを観るのは快感である。それはあくまでも映画の中だけで許される快感だ。
この映画でもゴジラは思う存分破壊と殺戮を繰り返す。だが、ゴジラが何を考えているかは分からない。人間の考える善悪の範疇には当て嵌まらない不死身の完全生物であるということだけ。

先に書いたようにこの映画のクライマックスは、「ヤシオリ作戦」である。会議室で立案され、官民の協力で準備され自衛隊が実行する作戦。いかにもこの映画の締めにふさわしい。伊福部昭の音楽が高鳴る中、開始される「ヤシオリ作戦」、この音楽と映像の見事なコラボ。性的興奮すら覚える。特撮オタクの夢の結実である。
この作戦、実は結構地味な発想。血液凝固剤をゴジラに注入しゴジラを凍結させるというのだから。ド派手なドンパチではない。そこが面白かった。いかにも実現可能のように見えて。

この映画には、所謂一般市民は、モブとしてしか基本的に登場しない。その辺の思いきりの良さは大したものである。恋愛要素もない。お涙頂戴もない。そこが素晴らしい。









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