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zoom RSS 三島由紀夫『天人五衰 豊饒の海・第四巻』を読む

<<   作成日時 : 2016/07/20 05:02   >>

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小説『天人五衰 豊饒の海・第四巻』三島由紀夫著 新潮文庫 昭和52年11月30日発行 平成17年10月15日42刷
2016年7月18日(月)読了

(注意!)ネタバレあり。『春の雪』『奔馬』『暁の寺』のネタバレもあり。

『豊饒の海四部作』の最終巻。76歳になった本多繁邦は、旅先で16歳の少年安永透と出会う。透が、松枝清顕の、飯沼勲の、ジン・ジャンの生まれ変わりだと信じた本多は、身寄りのない透を養子として引き取ることにする。いずれも20歳で夭折した清顕らの轍を踏まないように透に教育を施そうとするのだが、透の心には邪悪なものがあり、やがてそれが本多にも牙をむいてくるのだった。

少女ジン・ジャンが登場した第三巻『暁の寺』がつまらなかったので、どうなることかと思ったが、見事に有終の美を飾ったと言えようか。面白い。やはり、三島由紀夫は少女よりも少年を描いた方が溌剌として来る。
透というキャラもなかなか魅力的。純粋悪の少年というのが素晴らしい。ただ、悪と言っても人を殺すとか云うのではない。あくまでも観念の中の悪であり、実際に彼がやった悪とは、彼に近寄ってきた少女を罠に嵌めて精神的に傷つけるといったものか、本多に対するDVとかせいぜいそんなもの。非常に卑小である。だが、敢えてこういうキャラにしたのだろう。
恋に情熱を燃やし死んだ松枝清顕、テロに命を賭けた末に自決した飯沼勲の比べるとまるで危険なところのない凡庸な悪。戦後生まれで戦後民主主義の洗礼を受けた少年なんて所詮こんな物さ、という三島由紀夫の冷笑が聞えてくるようだ。だが、同時に三島がこの少年を愛しているのも確かだろう。自殺を図った透が、全盲になるが、精神異常でこの上なく醜い絹江という女と結婚するというハッピーエンドになるのだから。
ちなみに、透が全盲になるというのは、ブニュエルの『昼顔』のラストを思わせる。

結局、透は生まれ変わりではないことが分かり、本多が今まで信じてきた輪廻転生に疑念が出て来る。さらに、前巻でも描かれた本多の「覗き趣味」が、新聞沙汰になり、80歳の本多が築きあげてきたキャリアも社会的信用も一瞬にして水泡と化す。どうやらこの巻は本多を徹底的に追い込むことに主眼があるようだ。
それの極め付けがラストである。これによって、ここまで四巻かけて語られてきた物語の全てが引っくり返る。
このラストの解釈は色々あろうが、今回久々に読んでみて、これによって三島由紀夫が虚構の存在である三島由紀夫を消滅させたのではないかと思った。
そして、直後に自決して、本名・平岡公威(きみたけ)もこの世から消滅した。何とよく出来た「物語」であろうか。


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