『O(オー)嬢の物語』 奴隷状態における幸福

小説『O(オー)嬢の物語』1954年 フランス ポーリーヌ・レアージュ著 澁澤龍彦訳 河出文庫 1992年6月4日初版発行 2007年9月20日32刷発行
2016年5月1日(日)読了

SM文学の古典的名作。随分久々に再読。

若い女性O(オー)が、恋人である若い男ルネに誘われて、ある館に連れて行かれる。そこでOは、何人もの男たちに犯され、鞭打たれる生活を送ることになる。(第Ⅰ章 ロワッシーの恋人たち)
という内容は、今となってはありふれたものに見えるが、この小説が凄いのはそれが決して下世話に落ちないで、一種の芸術性、文学性を感じさせるところである。それには、澁澤龍彦の訳文もかなり寄与しているものと思われる。いかにも彼らしい言葉の選び方、文章の流れが非常に高級感を与えている。中身は「劣情を催す」ようなオハナシなのに静謐で厳かな儀式を描いているように思えてくる。原文がどういうものか知らないが、澁澤龍彦の作品になっている。

Oは、非常に理不尽な状況に追い込まれるのだが、最初から強硬に反抗するわけではない。誰かに無理矢理拉致されたのではなく、恋人に連れて来られ、その恋人を愛しているからだろうか、割と従順に受け入れてしまうような感じである。勿論、鞭打たれる時は、その痛みで泣き叫び、止めてくれるように哀願するのだが、それ以上の抵抗が見られないし、逃げ出そうとは露ほども思わない。その辺が非常に興味深い。
男たちのペニスを口に咥えさせられ、アナルやヴァギナに挿入されることによって「高貴なものになったように」Oは感じる。「肉体を瀆(けが)されることによって、彼女は品位を身につけたのである。」(78ページ)
館で生活は2週間で終わりを告げる。

館から解放されて元の生活に戻ったOは、ルネによって、彼の義兄ステファン卿に譲り渡される。Oの所有者が変わったのである。調教されていくO。(第Ⅱ章 ステファン卿)
昔読んだ時、第Ⅰ章の印象が強烈だったので、正直言って第Ⅱ章以降はその反動であまり覚えていなかった。今回、久々に読んでみたわけだが、やはりインパクトは弱い。読者としては話がよりエスカレートすることを望むのに何だかトーンダウンして行くように思える。それはこの章の要となるステファン卿のキャラが弱いことによるものかもしれない。どんな凄い男が出て来るのかと思ったら・・・、という感じ。
ただ、この章の眼目はステファン卿ではなく、Oの内面をより深く描くことにあったのかもしれない。第Ⅰ章では、恋人の命令通りに動く従順な女性に見えたOが、実は女学生のころは、気に入った女性を追いかけまわす奔放な女性だったということが明かされる。
嫌々ながら調教されてマゾヒストになった女性というイメージからむしろ積極的に性愛の世界に飛び込んで行く女性というイメージに切り替わってしまう。

ステファン卿によってアンヌ・マリーという女性を紹介されたOは、アンヌ・マリーの手で女性器に鉄環をはめられ、尻に烙印を押される。烙印は尻の両方に一つずつ。勿論、ステファン卿のイニシャルだ。家畜を飼うものが、自らの所有物と宣言するために押すのと同じ。ここにOは、完全にステファン卿の奴隷にして家畜になったのである。(第Ⅲ章 アンヌ・マリーと鉄環)
ここまでやるか、という感じ。女性器に自分では取り外せない重い鉄環をはめられ、焼き鏝で直に尻に烙印を押され、それを受け入れてしまうO。マゾヒズムの極致、というか愛の極致というか。愛とは決して対等の関係ではなく、支配と隷属であり、相手の所有物になることであるという強烈なメッセージ。

屋外でのパーティにふくろうの仮面をして鎖に繋がれて連れてこられたOは、人々の好奇の目にさらされる。
(第Ⅳ章 ふくろう)
ここに至ると、Oはもはや人間であることを止めて、人外の生き物になってしまったかのようである。見事なラストである。完璧な愛の成就と言える。
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