高田かやを読む1 『カルト村で生まれました。』 

マンガ『カルト村で生まれました。』高田かや著 文藝春秋 2016年2月15日第1刷発行
2016年2月29日(月)読了
 
(注意!)ネタバレ

いま、話題のマンガ。インパクトのあるタイトルに惹かれて買ってみた。
読んでみると、「カルト村」というタイトルからイメージしていたカリスマ的教祖のトンデモナイ教義に洗脳されている集団みたいなものとはまるで違う。それは冒頭でいきなり作者が明かしている。「な~んだ」という気持ちもするが、これはタイトル勝ち。

このマンガでの「カルト村」というのは、特に新興宗教というのではなく、志を同じくする人たちが、田舎のある地域に集団で移り住んで共同生活をしながら農業に従事して村のこと。
遙か昔の武者小路実篤なんかが始めた「新しき村」みたいなものの現代ヴァージョンか。
ま、大人がどんな思想を持ち、どんな共同体を作り、生活したり仕事したりするのは、どうぞご自由にという話だが、その大人たちの間に生まれた子どもたちには、生まれた時から選択の余地がなく、他の生活も出来ず、この村で暮らさねばならないというのは理不尽に感じる。しかも、親とは別の村で暮らしているので滅多に会えないというのはもっと理不尽。

このマンガは、その村で生まれて育った作者が、主に初等部(小学生)時代の思い出を描いたもの。一般社会からおよそかけ離れた思想で支配された村の生活がとにかく特殊で、読んでいて非常に面白かった。
体罰などの悲惨な体験も織り込まれていて、如何様にでも暗く深刻になりうる話だが、作者高田かやのほんわりした可愛い絵柄で中和されて、割とすんなりと読めてしまう。そこが大変うまい。
ただ、そこには弊害もある。こういう村も案外楽しそうかも、とちょっと思わせてしまう可能性がある。

村の理念である「所有のない世界」を作るというのは分からないでもないが、家族を引き離すというのは分からない。「家族制度の否定」という程ではないようで、ただ管理しやすいからそうしているだけなのか。
左翼系の集団なのかと思えば、「男は男らしく、女は女らしく」(112ページ)という思想があるところは極めて保守的で右翼的。
閉鎖的なのかと思えば、この村の子どもたちは一般の学校に通っているのも変と云えば変。まあ、自力で学校を運営するだけの資金がなかったのだろうが。

一般の子どもたちと比べてビックリするほど禁止事項が多く、不自由な生活を強いられる村の子どもたちだが、それでも子どもなりに楽しみを見つけて生きているところが泣ける。勿論、笑い処も随所にあり、その緩急のつけ方は抜群に上手い。
時折、大人になった作者と夫の「ふさおさん」の会話がマンガに挟まれて出て来るのもいい突っ込みである。特に「ふさおさん」は村とは何の関係のない一般人なので彼の抱く気持ちはこの本を読む大多数の読者の気持ちだ。

非常に面白く読んだ。次は是非、今回描かれなかった初等部以前の話と中等部・高等部の話をお願いしたい。

カルト村で生まれました。
文藝春秋
高田 かや

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by カルト村で生まれました。 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック