道草晴子を読む1 『みちくさ日記』 生きる

マンガ『みちくさ日記』道草晴子著 リイド社 2015年10月15日初版第1刷発行
2016年2月21日(日)読了

(注意!)ネタバレあり

13歳でちばてつや賞を受賞してマンガ家デビュー。
14歳で統合失調症と診断されて精神病院に入院。20歳で退院するまでそこで暮らす。
29歳で統合失調症は誤診だったと判明する。発達障害だった。

自らの非常に壮絶な体験を描いたマンガと聞いていたが、本を買ってまずページを捲ると、小学生が描いたような稚拙な絵が目に飛び込んで来た。
「え、これプロとしてお金取っていいレベルなの?」
と一瞬思ったが、読み進めて行くと、この内容にこの絵が実にぴったりとマッチしていることに気付き、最初の印象と違って、「この絵でなければダメなんだ」と分かってきた。単に絵が下手なのではなく、作者なりの信念があってこの絵で行こうと決めたのだろう。
このマンガの中身が実に過酷で悲惨で深刻なものだから、この絵によって読む者も救われた気がするのも確かだ。絵だけではなく、このマンガ全体に流れるユーモアのセンスもまた優れていて、この壮絶な話を面白くしている。エンターテインメントとして見事に成立している。やっぱりこれはプロの仕事だ。自己満足に終わらないで読者を常に意識しているから。

それにしても、本当に初めて知ることが多い作品だった。そもそも小児精神病院というものが存在すること自体知らなかった。
「小児」対象なので20歳になると退院しなければいけない。入院しながら学校にも通っている。
とか知らないことばかり。精神病院のことだけではなく、色々なことを教えてもらった気分。
でも、別に作者は啓蒙のためにこのマンガを描いているわけではなく、ただ自分の体験したことを素直にマンガにしただけなのだろうが、作者が意図しなくても教えられることは多いということ。

精神病院入院中に通っていた通信制の高校は部活動必修なのだが、何とボクシング部しかなくて、仕方なく入部して先生の熱血指導の元、シャドー・ボクシングやっていた、と云うくだりは声を出して笑ってしまった。
こんなマンガみたいな不条理なことが現実にあるのか。
こういう小さなエピソードを色々拾ってきて構成しているから作品としてより面白くなってきている。多少自虐的ユーモアっぽいけれど、決して自虐に溺れていないところがイイ。

退院して社会に出てからの方が色々大変なことが多いのも痛切に伝わって来る。作業所での仕事、一般のハンバーガー屋でのバイトなど、社会に出たら働くのは大変なのは誰でもだけど、精神の病にある人はなおさらだろう。でも苦労しながらもちゃんと生きて行く姿に感動を覚える。

25歳の時40歳の「オッサン」と付き合ったエピソードが、何となく笑えて、でも悲しくてとてもいい。

ラストで「希望」が見えるところも好きだ。
とても良いマンガを読んだという気分になる。
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