高室弓生を読む1 『縄文物語 わのきなとあぐね』 人が神と共に生きた時代

マンガ『縄文物語 わのきなとあぐね』高室弓生(たかむろ きみ)著 青林工藝舎 2007年3月25日初版第1刷発行
2016年3月29日(火)読了

(注意!)ネタバレあり。

本の帯によれば、「日本初の縄文マンガ」だという。雑誌に掲載されたのは、1989年~1990年で、単行本化されたのが同じ年。今から26年前。でも、今読んでもちっとも古臭く感じない。むしろ斬新にすら感じる。今までこれ以外に縄文時代を描いたマンガを読んだことがないからだろう。
我々の祖先が生きた実際の時代と世界を描いているのに、どこか異世界ファンタジーのように思えてしまう。それは彼らが、我々現代人とはあまりにかけ離れた世界観を持ち、儀式を行い、日常生活を送っているからだろう。
特に「神」という存在が、非常に近しくこの時代の人々に根付いている様子が非常に興味深く描かれている。

このマンガの主人公は、わのきなとあぐねという二人の少女。主人公ではあるけれど、この時代と世界の案内役・解説役と言っていい。この役割を少女に設定したお蔭ですんなりと作品世界に入り込むことができる。所謂「教育マンガ」的な堅苦しさから免れている。そこが素晴らしい。
話としては、あえてドラマティックな要素を盛り込んでいない。話に恋愛は絡まないし、自然災害やいくさなども出てこない。これも結構思い切ったやり方だと思う。普通だとどうしても面白おかしくするために事件を作品に出したくなるものだが。
そこに高室弓生の確固たる信念を感じる。この時代と世界がユートピアに見えて来る。

もっとも第9話が「戦(いくさ)」というタイトルなのは、ドキッとする。この世界の人々もやはり戦争をするのか、血なまぐさいのは嫌だなあ、と思っていたら、戦争は戦争でも戦争ごっこだった。そのあたりに高室弓生のユーモアのセンスの高さを感じる。

勿論、このマンガはストーリーだけでは語れない。むしろ細部まで緻密に構成された一コマ一コマを丹念に見て行くことが肝要だ。ここに詰め込まれた情報量の多さに驚く。著者は、どれだけたくさんの本を読み、知識を蓄え、それを自分の物として構築していったのか。それを考えると気が遠くなる。
それがまた、薀蓄の羅列ではなく、きちんと作品の中の昇華されているところが素晴らしい。
主人公の少女たちのファッションや化粧などもとても印象的。

『縄文物語』以外にも短編マンガやエッセイマンガを収められていて、これも面白い。
短編『巌の森』は、ちょっとダーク・ファンタジー寄りの作品。日常を細やかに描いた『縄文物語』と好対照。こういうのも上手て面白い。ユーモアの味つけがしてあるのもいい。

読んで良かった、というかもっと早く読めば良かったという感じのマンガであった。
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青林工芸舎
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