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zoom RSS 『わたしを離さないで 第6話』 日本国憲法第13条

<<   作成日時 : 2016/02/20 07:31   >>

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ドラマ『わたしを離さないで 第6話』原作:カズオ・イシグロ 脚本:森下佳子 演出:平川雄一朗 出演:綾瀬はるか 水川あさみ 三浦春馬 中井ノエミ 白羽ゆり 梶原善 馬場園梓
2016年2月19日(金)放送 TBS

(注意!)ネタバレあり。原作のネタバレもあり。

恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)の三角関係が歪んだ形でこじれて行ってしまう話。それに真実(中井ノエミ)が暮らすマンションの仲間ひとりが事件を起こし、全員が摘発され、真実は逃亡するという話。その二つの話が交互に描かれる。
正直いって、三人の痴話喧嘩のあれやこれやよりも真実の運命の方が気にかかる。でも結構作り手は意地悪なので、真実の逃亡から街頭での必死の訴えという非常に緊迫したシーンにカットバックして三人の愛憎渦巻くシーンを入れて来る。折角の話がぶち壊しになるところだが、それを回避しているのは、三人が普通の人間ではなく、「提供者」であるという点である。単なる痴情のもつれではなく、その底には「猶予」なるものにすがろうとする「提供者」ならではは強い思いがあるから見ていてバカバカしくなる寸前で見事に成立している。
真実も恭子たちも真摯に生きているのは確かなのである。

真実のエピソードは、原作には全くない、ドラマオリジナル。良く思い切ってここまでやったものだと脚本家の森下佳子の度胸と剛腕に感心する。勿論、原作とは全く違う思想ではある。原作では、「提供者」たちは、逃亡も抵抗もしない。自分たちの人生に疑問を持って悩むこともない。決められた通りの人生を全うするだけ。ただ少しでも長く生きたいという意思はあって「猶予」に夢を見ている。
ドラマでは、恭子たちはほぼ同じような思想を持っているが、真実だけが違っている。彼女だけが原作のアンチテーゼと言える。森下佳子は原作をもとにして独自の世界をここに見せている。
その辺に賛否はあろうが、ぼくは非常に面白く見た、原作は好きだが、全く同じようにドラマを作っても仕方なかろう、と思う。

それにしても、日本国憲法第13条が出て来るとは全くの想定外だった。ここまでやるか、アッパレ。でもこれでこのドラマが日本を舞台にしていることがはっきりしたわけだ。我々の住む日本とは違う日本ではあるけれど。

真実の仲間がやっていた抵抗運動も実にあっさり壊滅してしまうあたりに作り手の残酷な視点を感じる。みんなで共に立ち上がって世の中を変えるみたいなことに懐疑的どころか、無駄だと云っているようで。
結局、一人だけ辛うじて逃げた真実が街頭でスピーチするというシーンになる。集団の訴えではなく、一個人としての命懸けの訴えにしたあたりに森下佳子のテーマが集約されている。

街頭で一人だけで選挙演説している男(ちょっと変、一緒に他の人が居ないのは)からマイクを奪った真実が、
「私は候補者ではありません。私は提供者です。」
と言うのはギャグではないのだろうが、何故か笑えてしまう。

そのあとの真実のまさに「真実の叫び」は心を打つ。演じる中井ノエミとしても一世一代の名演技だろう。
中井ノエミは日仏ハーフということで明らかに他の登場人物と顔立ち違う。そんな彼女だけが、公衆の面前で心の内をぶちまけることができるというところにキャスティングの妙がある。
真実は、誰かに逮捕されたり、殺されたりするのではなく自ら命を絶つというのも感動を高める。
だが、そのあとで刑事が恭子に、
「街中でな、ショーをやりやがったんだ。てめえの命はてめえのもんだってな」
と言うことによってその感動が相対化されるのも上手い。
命懸けの主張も別の立場からみれば傍迷惑な茶番に過ぎないと如実に表している。
そこが何とも素晴らしい。


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