『セッション』 仰げば尊し、我が師の恩

映画『セッション』WHIPLASH 2014年 アメリカ 配給:ギャガ 監督・脚本:デイミアン・チャゼル 出演:マイルズ・テラー J・K・シモンズ メリッサ・ブノワ ポール・ライザー オースティン・ストウェル ナイト・ラング 上映時間107分 日本語字幕版 字幕翻訳:石田泰子
2015年4月17日(金)公開
2015年5月24日(日)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン1 14時50分の回 座席C-14 入場料(当日券)1800円 パンフレット720円

(注意!)ネタバレあり。この映画を見ていない方は、以下の文章を絶対に読まないようにしてください。

シェイファー音楽院に入学したニューマン(19歳)は、最高のドラマーを目指し、毎日練習を重ねていた。そんなある日、彼はフレッチャー教授に出会う。そして、彼のバンドに入り、ドラムを叩くことになる。それから彼にとって試練の日々がやってくる。

映画を見る前は、予備知識ゼロで見たい方ではあるが、この映画に関しては、事前に「鬼教師が生徒をスパルタ教育する映画」だという余計なことを知ってしまった。ま、知ってしまったものはしょうがない。そのつもりで見たのだが、思ったよりも鬼教師じゃないし、スパルタでもない。もっと酷い人権無視の悪逆非道なやり方かと思っていたではないか。確かに口からは罵詈雑言、時には平手も飛んでくるという厳しい指導だが、この程度なら、娯楽映画として面白く見られる範囲である。
フレッチャー教授を演じるJ・K・シモンズが抜群に上手く、魅力的。罵詈雑言にもバラエティがあるし、非常に大人げなく、バンドのメンバーを追い詰めていくさまも面白く見せていく。この俳優、知らないナ、と思ってパンフレットを読んでみたら、サム・ライミの『スパイダーマン』三部作に編集長で出ていた人なのか。あれでも主人公ピーター・パーカーをやたらに怒鳴りつけていた印象があるが、そうか、怒り芸はこの人の十八番(オハコ)の持ちネタだったのか。「芸」の昇華されているから嫌味がなく、後味がいい。

確かにフレッチャー教授は傲慢で厭な奴ではあるけれど、彼の生徒でこの映画の主人公ニューマンもまた彼に負けずにというか輪をかけて傲慢で実に厭な奴である。教授に感化されたのか、それとも元からそういう資質があったのか。
とにかくバンドでドラムをやっていくうちにどんどん彼の行動は悪い方にエスカレートしていく。それはもう狂気と言っていいほど。命懸けでドラムを叩く。叩いているうちに手から血が出てドラムが血まみれになっても止めない。その凄まじさに教授の存在も霞んでしまうほどだ。
見ているうちに最近読み直した梶原一騎・川崎のぼるのマンガ『男の条件』を思い出した。主人公が怪我して血を流しながら絵を描くトンデモナイシーンがあり、それと二重写しになった。まさか現代のアメリカ映画に梶原一騎イズムを感じるとは思ってもみなかった。根性・努力・命懸けといった言葉がしっくりくる映画だ。

さらにニューマンは、付き合っている女性に向かって「いずれ、君の存在がぼくの音楽人生の邪魔になるから」とか言って別れを告げる。このシーンは呆気にとられて大笑いしてしまう。まだ何も弊害など起きてもいないうちから先回りし過ぎて恋人を切ろうとするこの傲慢極まりない態度。酷すぎて逆に面白い。
「道を究める者にチャラチャラした女など不要、むしろ有害」的な考え方をアメリカ人がするとは意外。これは結構、日本的な考えだと思っていた。日本もアメリカも極端な奴が辿り着く考えは同じということか。

さらにさらにニューマンは、大事なコンサートの日に交通事故を起こして文字通り血まみれでコンサート会場に現れてドラムを叩こうとする。根性があるというか、ただ単に狂っているというべきか。このくだりは実に鬼気迫るシーンであり大いに笑わせてもらった。ニューマンを演じるマイルズ・テラーがとてもいい。
彼の場合、責任感というよりもドラマーという地位を他の奴に渡したくないというエゴイズムが全てなんだと思う。ここで血まみれでも無事にドラムを叩ければ感動の名シーンだが、そんなことあるわけなく、ただコンサートをぶち壊しただけ。彼は退学になる。教授も色々あって解雇される。

鬼教師が生徒をいじめる話かと思ったら、全く違う。むしろ先生の方が生徒によって甚大な被害を蒙るという話。
やっぱり映画って自分の眼で見ないと分からんものだなあ。

クライマックス。久々に再会した師弟。何とあれほど酷い目に遭ったのに元教授は新しいバンドにニューマンを誘う。和解、そして感動のフィナーレかと思いきや、これが実は元教授の仕組んだ罠。ニューマンをフェスの本番で辱めようとしたのだ。この辺に元教授の大人げない、子供っぽいところが露骨に出ている。復讐するなら、正攻法から陰険な裏の手口まで色々ありそうなものの、よりによってステージ上でそれやるかね。ニューマンが、失敗して恥をかくってことは、バンドも失敗ということだし、元教授の責任問題にもなるだろう。わざわざ自分の首を絞める復讐っていうのが何とも面白い。映画としては、とにかく音楽で決着つけたかったのだと思う。音楽の怨みは音楽で晴らす。首尾一貫している。
ラスト、ドラムを叩き続けたニューマンの何とも言えないいい表情を捉えて映画は終わる。余分なエピローグなど何もない清々しさ。

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