バレエを見る1 『白鳥の湖』 美しいものは恐ろしい

DVD(バレエ)『白鳥の湖』パリ・オペラ座バレエ団 振付:ルドルフ・ヌレエフ 音楽:ピョートル・チャイコフスキー 出演:オデット/オディール=アニエス・ルテスチャ ジークフリード王子=ジョゼ・マルティネズ 家庭教師/ロットバルト=カール・パケット 2005年収録 パリ・オペラ座 上演時間141分 全4幕 バレエDVDコレクション第1号(デアゴスティーニ)
2015年5月10日(日)鑑賞

(注意!)ネタバレあり

恐らくバレエで一般的に最も良く知られている演目だろう。ぼくも昔、劇場で3回ほど見たことがある。DVDで見るのは初めてなのだが、生の舞台の臨場感は望めないなと半分侮っていた。見てみると、侮って申し訳ないという気分。確かに臨場感はないけど、それを補って、あるいは上回る要素がDVDにはあったのだ。
劇場の席に座ってバレエを見る時、当然ながら一方向からしか見えない。普通だと正面の舞台に対峙する形になる。舞台を横から見ること、上から見ることはできない。またある人物の顔や手や足をアップで見ることはできない。ま、これはオペラグラスを使えば可能か。それでもここぞという時にタイミングよくアップで見られるわけではない。その点、DVDの映像ではそういったことが可能になる。
特に今回見たDVDはかなり意識的に凝った映像作りを行っている。決してカメラを正面に据えっぱなしで舞台中継のようにして撮っているわけではない。見事に一つの映像作品になっている、
ここぞという時のバレエ・ダンサーのクローズアップの映像の巧みさ。また群舞の捉え方が非常に手が込んでいる。客席からは絶対見られない俯瞰からのカメラワークが多用され、実に素晴らしい効果を上げている。正面から見た群舞のシンメトリーは、俯瞰から見てもまさに一糸乱れぬものである。これは感動もの。
勿論、主役たちのソロ部分も存分に見せてくれる。こういう時は敢えて顔のアップなどしないで全身をきっちり写し、その肉体の美、動きの美を堪能させてくれる。誠に鮮やか。

『白鳥の湖』はいくつものヴァージョンがある。単純に言って結末だけでもハッピーエンドからバッドエンドまである。今回見たのもバッドエンドと言っていい。しかも最悪のバッドエンド。
冒頭でジークフリート王子が見た夢として演じられたシーンが、ラストで再現されるというのが非常にユニーク。王子は予知夢を見たのか。それとも、この話のすべてが王子が見た夢なのか。冒頭とラストが同じということは、これは永遠に同じことが繰り返されるエンドレスな構成なのか。色々なことを考えてしまう。
ラストでロットバルトと対決した王子が破れて倒れ、オデットがロットバルトに何処かに連れ去られてしまう、というオチはまさにバッド。これならオデット、王子ともに死ぬオチの方がまだ救いがある。
主人公の奮闘努力が水泡に帰すという点では映画『ミスト』に通じる後味の悪さ。

善であるオデットと悪であるオディールを同じ女性が演じるというアイデアはやっぱり素晴らしい。一人の女に善と悪の二面性を見るというのはあまりに古典的だが、今でもこちらの心に響く。これが男が女に抱く一つの理想像であるからだろう。清らかな純粋無垢な女と男を誑かす極悪な女が同一人物であってほしいという男の気持ち。

家庭教師およびロットバルト役のカール・パケットがあまりの美形の男性なのでついゲイ的な含みを感じてしまった。家庭教師と王子が踊るところにどこかエロティックさが匂ったのは気のせいかどうか。
そうなるとラストのロットバルトと王子の対決は痴話喧嘩?

それにして男女ともにバレエダンサーのスタイルの良さと身体能力は素晴らしい。本当に美しい。
ただあまりに美しし過ぎて恐ろしい。
チャイコフスキー:白鳥の湖(全曲)
ユニバーサルミュージック
2008-01-23
ロンドン交響楽団 プレヴィン(アンドレ)

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