『偽りの民主主義 GHQ・映画・歌舞伎の戦後秘史』

ノンフィクション『偽りの民主主義 GHQ・映画・歌舞伎の戦後秘史』浜野保樹著 角川書店
2015年2月8日(月)読了

映画・演劇の戦後史。内容は多岐に亘るが、特に連合国軍占領下(1945年~1952年)におけるGHQの文化介入を取り上げた前半部が面白かった。

GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の部門の一つであるCIE(民間情報教育局)の映画班長になったデヴィッド・コンデはまことに興味深い人物だ。11歳以降は学校教育を受けずに独学で日本について勉強し、日本の専門家になったというが、アメリカでの職歴は確認できない。さらに軍人でもない。映画関係者でもない。思想的には左翼と目される。そんな人物が、何故か占領下の日本の映画行政の最高責任者になってしまうという不思議。歴史の転換点には時としてトンデモナイ人物が現れるものだ。
一個人が自分の思想、もしくは好き嫌いで一国の映画界を思いのままに操るなんてことができるというのが、占領下という特殊状況では可能だということ。そしてこれが戦争に負けるということなのだと思い知らされる。
もっともその天下は長く続かず、彼のような左翼はGHQから姿を消していく。

コンデが皆に嫌われた悪玉であるとすれば、「歌舞伎を救った男」として今も一部で伝説化されているフォービアン・バアーズは善玉か。この本を読むと彼が歌舞伎存続に尽力したのは確かではある。ただ、彼もまたコンデ同様、好悪の感情が激しく、肯定する人ばかりではないようである。その辺を様々な資料に当たって具体的に書いている。それが伝説を剥がすとまではいかないが、むやみな英雄視よりも人間が感じられて面白かった。

この二人の話以外では、黒澤明の『羅生門』を海外に知らしめるために尽力したジュリアーナ・ストラミジョーリの話が面白かった。コンデ、バアーズ、そして後半部に大きく取り上げられる永田雅一といかにもアクの強い人物が登場する中で、この女性の行動はやはり爽やかで頼もしい。この人こそ戦後日本映画の恩人と言っていい。
それにしても『羅生門』も占領下の時代の映画だったのか。1950年の作品だ。これがこの時代にヴェネツィア映画祭でグランプリを取った意義は大きい。

それ以外にも1950年代前半の日本と外国との合作映画の話、ランナウェイ映画の話が面白かった。
さらに市川雷蔵の話、永田雅一の波乱万丈の人生、歌舞伎の海外公演の話と盛りだくさん。ちょっと詰め込みすぎて占領下とは関係ない話も多いが、その辺のごった煮感もまた良し。

偽りの民主主義 GHQ・映画・歌舞伎の戦後秘史
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浜野 保樹

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