『トミノの地獄 第1巻』 ジゴクハジメ

マンガ『トミノの地獄 第1巻』丸尾末広著 発行:株式会社KADOKAWA 2014年12月5日初版初刷発行
2014年12月12日(金)購入・読了

(注意)ネタバレあり

アタシは アタシたちが 棄てられた 日のことを おぼえている
アタシたち まだ一歳にも なってなかった

雪が 降っていた
泣いて いたのは誰?
お母さん?
その人は 汽車で行って しまった
(14ページより引用)

丸尾末広のマンガを読むのは久しぶりだ。25年ぶりくらいかしら。もう遠い昔ことなのでよくおぼえていない。作品の中身も正直いって朧に霞んでしまっている。だからハッキリとしたことは言えないのだが、この新作マンガを読んでみて、どこか懐かしさを感じ、「ああ、丸尾末広だ、昔と変わらないなあ。」という気持ちと、「あれ、丸尾末広、何だか丸くなった?昔はもっとエロくてグロかったよね。」という気持ちが交差してしまう。ま、その辺は旧作を読み返して解消することにする。

双子の物語、というとどうしても強烈な印象を残したアゴタ・クリストフの『悪童日記』を思い出してしまう。丸尾末広も影響受けてるかな?もっともあちらは男の子の双子、こちらは男女の双子。父の顔も知らず、母に捨てられ、親戚に貰われて育てられた。この親戚が酷い奴らで虐待された。この辺は意外にあっさりで短い。ただ、ひもじくなった男の子の方が、お蚕様を食べるシーンはやはり強烈。
親戚に見放された双子は、売られることになる。行きつく先は東京浅草の見世物小屋。そこで双子は色々な人々と会い。色々な体験をすることになる。
見世物小屋のフリークス(奇形たち)は、どうしてもトッド・ブラウニングの『フリークス』を思い出してしまう。そして、シオドア・スタージョンの『夢みる宝石』も。
双子にとって見世物小屋は、安住の場所であり、フリークスたちは心許せる仲間だった。傍目から見れば、社会の底辺のような場所であってもそこにいる者にとってはユートピアであるというアイロニーが効いている。
双子はそこでトミノとカタンと名付けられ、千里眼の見世物をやって暮らすようになる。その顛末も面白いし、そこのいる仲間の描写も面白い。そして、早くも第1巻にして双子の出生の秘密(父親の正体)があっさり明かされる。これもご都合主義と言えば言えるが、それがいい。
ラストでトミノとカタンは離れ離れになる。二人の運命や如何に、というところで次巻という次第。

とまあ、ストーリーをなぞってみても実はあんまり意味はない。話としては大昔からありそうなもの。結局、丸尾末広の魅力はその絵にあるのは言うまでもない。つい何度も見直してしまう。双子、フリークス(なかでも蛸娘エリーゼがいい)、浅草の情景、モブシーンどれも手が込んでいて見飽きない。
あとこれは言わずもがなのことだけど、ここに出てくる浅草も人間たちも当然ながら丸尾末広の頭から生み出されたものであるということ。そもそも時代もはっきりとは明記されていない。これは、かつて有ったかも知れない、これから有るのかも知れないところでの不思議なオハナシだ。

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