『日本の風俗嬢』 女子大生はなぜ風俗嬢を目指すのか

ノンフィクション『日本の風俗嬢』中村敦彦著 新潮新書 2014年8月20日発行 
2014年11月22日(土)読了

職種は?収入は?適性は?成功の条件は?
働く「35万人」女性の基礎知識
(帯より引用)

タイトルこそ『日本の風俗嬢』ではあるけれど、単に風俗嬢のみでなく、広い視点から風俗業界、風俗店について描き、現代日本の一面を白日の下に晒している。極めて真摯で面白い本である。
まず、風俗業界の歴史を辿り、風俗店の種類からデリヘル店の経営は儲かるのか、までを教えてくれる。(第一章性風俗の現在 第二章ビジネスとしてのデリヘル経営)
この辺から知らないことが多く非常にためになる。客として行っただけでは到底分からないこともこのように別の角度から眺めると一目瞭然になる。
風俗業界の歴史は、お上による規制によって作られてきたのだということを痛感する。近年で言えば、1999年の法改正によりデリヘルが合法化されたこと、2006年の法改正により店舗型風俗店が以前に増して厳しく規制されるようになったこと。特に2006年の方は、ぼくのような客の立場でも非常に記憶に新しい。それまで普通のマンションの一室をプレイルームにして営業していた風俗店がある日突然、電話しても繋がらなくなるという事態にぼくも遭遇した。これで池袋や高田馬場辺りのマンションで営業していたイメクラ、M性感、SMクラブが軒並み潰されてしまった。今、思い返してもまさに痛恨事である。
「SMクラブは店舗型がなくなったことで、かなり深刻なダメージを受けています。一つの文化が終りつつある」
と本の中で語るSMの女王様の声が悲しい。
ぼくの知る限り、2006年の法改正に反対の声を上げた知識人はいない。右の人も左の人もどういうわけか風俗に関しては反応が鈍い。どっち側の人もイメクラやM性感やSMクラブに行ったこともあるだろうに。
この点に関しては、ぼくは右も左も信用しない。

「裏風俗」と呼ばれるものの実態についての文章も興味深い。ぼくは行ったことがないから。結構驚くようなことが書いてある。勉強になる。

第三章からは風俗嬢について詳しく書かれている。現代女性のセックスに対する意識の変化が風俗という職業への抵抗感を小さくして行っている。それが、一般女性による風俗業界への参入につながる。
さらに社会情勢の変化。以前にもまして女性は苦しい生活をしている。ここに書かれている例で言えば、地方から出てきて大学に通っている女性が置かれている状況の大変さ。とても普通のバイトでは暮らしていけない。そこで風俗へという流れ。
昔のように遊び好きの女が借金つくり、その返済のため、贅沢な暮らしをしたいために風俗やっている、みたいなスステレオタイプは少ない。これぼくも客として行った実感でもある。確かにここ数年、(自称)大学生という風俗嬢が増えた。見た目は勿論綺麗で可愛いけれど、化粧は地味で服装も(下着も)質素、話しぶりもいたって真面目という女性が多い。いかにも普通の女の子という感じ。働いている理由も「生活のため」とか「学費のため」とか「留学のための貯金」とか極めて真っ当。全部、そのままに受け止められないが、女の子たちの澄んだ目を見ていると嘘とは思えない。

この本で一番驚いたのは、実はそういう女性たちが風俗でそんなに稼いでいないこと。いろんなランクが事細かく書かれていて、一番低ランクでは、普通のバイトと同じくくらいしか収入がないという酷さ。これじゃ、わざわざ苦労して風俗やっている意味がない。それ以上の驚きは、風俗にさえ勤められない女性がいるということ。容姿はもちろんだが、人間としてもコミュニケーション能力に欠ける女性はまず風俗店の面接に受からないということ。
ここでもコミュニケーション能力が大事なのか。ま、考えてみれば、風俗もサービス業(究極の?)だから接客ができない、会話すらできない女性は店にとっても客にとっても嫌だろう。風俗はもはや最後のセーフティーネットではないと著者は言う。これはまさに目からウロコ。

「近い将来、高学歴じゃないと風俗店に採用されないみたいなことはありうるかもしれません。例えば、今だってリストカットの痕があるだけで採用されにくくなっている。採用されてもお客さんがつかず稼げない。こうして風俗嬢にもなれない人が増え、さらに風俗嬢の中でも格差がひろがっている。」
(風俗嬢支援を行っているNPOの人の言葉。232ページより引用)

著者は、ラストの「第六章 性風俗が「普通の仕事」になる日」でこれから風俗業界および風俗嬢がどうなるか、どうあるべきか書いていてこれも示唆に富んでいる。
風俗嬢が個人授業主として自覚をもって仕事をする。その先には海外への進出もあるという。確かに今はネット時代だから、スマホ一つあれば、宣伝も営業も店に頼らず女性一人でできる。実際、SMの女王様では個人で顧客管理して営業している人が以前からいる。
ただ、これは誰でもできることじゃない。やはり店は残るし、店に頼る女性も多い。そちらもどうするかについてに提言があり、いろいろ納得できる。果たしてこの章のタイトル通りに「普通の仕事」になる日、が来るのだろうか。

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