『予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖』 吸血鬼・夢魔・牧神

小説(短編集)『予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖』1939年~1969年 アメリカ ロバート・ブロック著 井上雅彦編 植草昌実他訳 扶桑社ミステリー文庫 2014年6月10日第1刷
2014年10月3日(金)読了

日本で編集された短編集。12編収録。帯に依れば、「オール本邦初訳&初収録作!」だそうだ。
多作だったロバート・ブロックにはまだまだ埋もれた作品は多そうである。

「殺人演技理論」1962年
スタニスラフスキー・メソッドの信奉者である舞台俳優が、殺人犯という「役」を実生活で演じた時に何が起きるか、というオハナシ。なかなか面白い。ブロック流のユーモアが感じられる。

「奇術師」1958年
舞台俳優に続き、こちらは奇術師を巡る殺人の物語。編者の意図的なものだと思うのだが、この短編集では映画を含むショービジネスに関する作品が多い。ブロック自身もこの題材に愛着があり、楽しんで書いているのが伝わってくる。
ただ、作品としてはこれはあまり良い出来栄えとは言えない。今となっては使い古されたトリックで途中でネタが分かってしまう。それを補うような良いところもない。

「マント」1939年
舞台衣装を扱う店で手に入れたマントを着た男は、自分が何か別のものに変貌してしまったことに気付く。
マントに着目して話を作っているのが面白い。なるほどマントは「彼等」のトレードマークと言っていい。ただ、最近はどうだろう。これってある年代までしか通じないのではないか。ともあれ、オチも面白い。
でも同族同士でやるものなのかな。てっきり人間相手だとばかり。

「プロットが肝心」1966年
これはなかなかの傑作。過去の様々な恐怖映画にオマージュを捧げた作品で大変愉快。薀蓄の詰まったパロディとしても面白い。ここで取り上げられた映画をどれだけ見ているか数えてみるのも一興。こういうのを読むと、ロバート・ブロックはこの手の映画が心底好きなんだな、と分かる。

「クローゼットの骸骨」1946年
閉所恐怖症の妻をクローゼットに閉じ込めて殺害する夫の話。
これが一番古臭く感じた。恐怖症を持つ人間を一番苦手な状況に追いやって殺す、という発想が今となっては残念ながら陳腐。そんなにうまくいくものか、という気にどうしてもなってしまう。

「殺人万華鏡」1958年
ショート・ショート三編セット。ちょっとグロ風味。これもロバート・ブロックらしいと言える。この短編集では、その手のものは他にないのでなおさら効果的。特に第三話は、ダールの「おとなしい凶器」を思わせるが、もっとエゲツない。そこがいい。

「ハリウッドの恐怖」1957年
ハリウッドもの。映画好きなら一度はこんな妄想を抱いたことある、と言いたいようなオハナシ。他の業界を舞台にしたのではこの面白さは出ないだろう。いかにもダーク・サイドがありそうなハリウッドならでは。ロバート・ブロックの映画への愛がシニカルなユーモアで表現された傑作。

「牧神の護符」1939年
他の作品と明らかに趣の違う作品。ユーモアは影をひそめ、極めて真っ当な幻想小説であり、恐怖小説である。変身譚の傑作。

「心変わり」1948年
これはさほど感心しない。オチが分かってしまったから。勿論それでも面白い作品はあるけれどこの作品の場合はそこが眼目だから。コッペリアの悲劇。

「弔花」1949年
ゴースト・ストーリーでもこういう風な「いい話」はどうもダメだ。やっぱり恐怖を与えてくれないと物足りない。感動を求めてはいない。

「影にあたえし唇は」1956年
こちらもゴースト・ストーリーだが、感動ものではなく、恐怖もの。しかもかなりひねりが効いている。やっぱりこちらの方が手が込んでいて面白い。

「ムーヴィー・ピープル」1969年
これも映画好きなロバート・ブロックの面目躍如といえる作品。面白い。これから古い映画を見る時にエキストラに注目してしまいそうな傑作。発想がいい。


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