小説(児童文学)『思い出のマーニー』 第1章 私は外側にいる

小説(児童文学)『思い出のマーニー』1967年 イギリス ジョーン・G・ロビンソン著 高見浩訳 新潮文庫

(注意)小説『思い出のマーニー』とアニメ版のネタバレあり。

アンナは、孤児。養父母に育てられている。
アンナは、自分が〝外側〟の人間である、と思っている。だから〝内側〟の人間のようにパーティに参加したり、親友と仲良くしたり、お茶に招かれたりすることは自分とは無関係である、と。
アンナは、頑張ろうともしない、という態度を取っている。
アンナは、常に〝つまらなそうな顔〟をしているように心がけている。

こんなアンナのネガティブな内面が描かれている冒頭からしばらくは正直言って読むのがしんどい。アニメだと絵や動きの魅力で見てしまうのだが、小説はそうはいかない。大した事件も起きないし。
やっと77ページ目にマーニーが登場するとホッとする。途端に世界が鮮やかに色づき、躍動し始めて面白くなる。

イギリスが舞台のこの小説を日本に舞台を変えて話を構築したアニメ版と基本的なプロットは同じだが、随分違った話に思える。アニメ版は大健闘しているが、それでも国が異なる話なのでどうしてもいくつか無理が生じていた。その辺のところをこの原作と比べてみるのも一興だろう。

ちょっと驚いたのは、初めて会ったばかりのマーニーがアンナの頬にキスするシーン。確かアニメ版にはなかったはず。
キスといっても別に性愛のニュアンスはなくて生身の人間であることを確認するための行為。ただ、これをアニメで映像化するとそれ以上の「意味」が出てきてしまう。だからカットしたのか。

アニメ版はホラーテイストが濃厚と感じたのだが、原作からはそんなに感じなかった。アニメでもっとも恐怖感が出ているサイロのシーンも原作では風車小屋なんだが、恐怖というよりスペクタクルな見せ場という印象。

アンナが、花売り娘になってパーティの大人たちに配る花がシー・ラヴェンダーという花であることを原作で初めて知った。アニメでは確か名前は出て来なかった。
シー・ラヴェンダーを検索してみると、何とラヴェンダーとは言うもののラヴェンダーとは類縁関係にないという。う~ん。
ちなみに和名はイソマツ属。海岸沿いや沼地など生育する花だという。
この小説の舞台が、海に近い町で、マーニーの住んでいるのが湿地に建つ屋敷であることを思えば、もっともその地にふさわしい花だと言える。そういうこともきちんと考えられているのだなあ。

第21章の終わり(206ページ)からは、もうマーニーは登場しない。代わりに湿地屋敷の新しい持ち主であるリンゼイ一家が登場する。アニメでは、彩香という一人の少女がリンゼイ一家の代わりに出している。
ここが、原作とアニメの大きな違い。原作では、このリンゼイ一家というリンゼイ夫妻と5人の子どもたちと出会い、仲良くなることによって今まで孤独だったアンナが初めて家族というものを知るという非常に重要な展開になる。今まで自分が外側の人間だと思っていたアンナが内側の人間になれたという喜びが描かれる。それまでのマーニーとアンナのミステリアスでファンタジックな関係を描いてきたのとはまるで正反対。ずっと霧がかかっていたのがスッキリ晴れた感じ。この落差は凄い。まるでそれまでとは違う小説を読んでいるかのようだ。
ちょっとこの構成には疑問がある。こう明るくなっては、マーニーとの話が妙に軽くなってしまう。アニメ版は、ここまでやらず、にぎやかし要員の5人の子どもも彩香一人に絞っている。それの方がしっくりくる。

クライマックスからラストに掛けてはマーニーとは誰だったのか、アンナとは誰だったのか、その真相が全て明かされる。この辺は、まさにアガサ・クリスティーのミステリのノリである。名探偵が、関係者一同を一室に集めて事件の謎解きをして見せる、というあのパターンそのまま。著者は、児童文学者ではあるけれどミステリにも造詣が深いと見た。
この小説では、すべての事情を知っている小柄でずんぐりした体形で短い髪がもしゃもしゃしている老婦人が名探偵の役目を務める。
アニメだとこういう説明パートは非常に評判が悪い。長々とセリフで説明しないで映像で見せろよ、というのが決まり文句。その辺、アニメは上手く処理してはいるが、やはり小説ほど上手くはいかない。
 
(以下、もっとも重要なネタバレをしているので、アニメと小説を見ていない、読んでいない人は要注意。)

アニメで一番引っかかったのは、杏奈(原作のアンナに当たる)が、どうして自分の祖母の名前がマーニーだということを知らなかったのか、ということ。いくら幼少の頃のことといえども、調べればすぐわかるだろうにと思ってしまう。そこは、原作ではどうなっているのかが興味深かったが、実はマーニーというのは愛称であって本名はマリアンだった、という事実が明かされている。ああ、それなら孫のアンナが祖母のマリアンをマーニーと結びつけないのも無理はない。ミステリ的に実に上手い。
(つづく)
思い出のマーニー (新潮文庫)
新潮社
2014-06-27
ジョーン・G. ロビンソン

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