『マレフィセント』 女尊男卑の王国、マゾヒストの究極の夢

映画『マレフィセント』2014年 アメリカ

(注意)ネタバレあり。
この『マレフィセント』と『アナと雪の女王』はプロットもよく似ているが、何といっても、「真実の愛は、男女間では存在しない。女性の間だけで存在する。」というメッセージが全く同一である。
常にダークでアナーキーな映画を作り続けてきたディズニーの面目躍如、といっていい。
ただこれは、男性排除とか男性嫌悪といった話ではない。男は存在しても構わない、女性の邪魔をしなければ。ただ、世界のトップで君臨して支配するのは女性であることを忘れてはならない。何という素晴らしい思想だ。亡くなられた沼正三氏(『家畜人ヤプー』の著者)に是非見ていただきたかった。
『マレフィセント』は、ある種のマゾヒストにとってまさに理想の映画である。

重要な役として人間の三人の男が登場する。
一人はステファン。少年時代、妖精の国に入り込んで、少女だったマレフィセントと運命的な出会いをする。やがて友情から愛情へと変わっていくのだが、ステファンの心に中には野望の火が燃え上がる。結局、妖精を敵視し、マレフィセントを憎悪する国王の意を汲んでマレフィセントに近づき、騙し、彼女が眠っている間に妖精の象徴である翼を切り捕り、国王に献上する。喜んだ国王によって次期国王に指名される。
かつて確かに愛した女性を出世のために裏切った外道、ではあるけれど、演じるシャールト・コプリーの演技の上手さと見た目の印象からそれほど極悪非道の男に見えない。野心家ではあるけれど神経質でむしろ弱い心の持ち主、という感じ。確かにマレフィセントに酷いことをしたわけだが、罪の呵責とマレフィセントへの恐怖から次第に精神に異常をきたしていくさまはむしろ気の毒。映画はこの男がいかに破滅していくかを容赦なく描いていく。マレフィセントのような女性に破滅させられるなんて羨ましい限りである。

もう一人は、隣国の王子フィリップ。役としての出番は少ないが案外重要な役。ディズニーとしては、『白雪姫』以来伝統の典型的な王子様。そもそも『白雪姫』の王子様にしてからがやけに影が薄かったが、フィリップ王子は影が薄い上にまるで間抜けな役回りを担っている。
せっかく、オーロラ姫と出会っていいムードだったんだが、一番肝心な局面で実はフィリップ王子とオーロラ姫の間には真実の愛などないのだということが丸わかりになってしまう。男として何という屈辱。
ただ、フィリップ王子が立派なのは、それにもめげずにラストのオーロラ姫が女王になる戴冠式の片隅にちゃっかり出席していること。屈辱をものともしない、いやむしろ屈辱を喜びとするのはマゾヒストの鑑。
文字通り女王様になったオーロラに死ぬまで支配されて隷従していくのだろうな、と思わせるラストの姿であった。まことに羨ましい限りである。

三人目は、ディアヴァルという男。実はこの男、もともとはカラスであり、人間に殺されそうになったところをマレフィセントに命を救われ、人間に変身させられた経緯がある。もう最初から下僕であり、使い走りである。しかもマレフィセントの都合により、他の動物に変身させられたりもする。生殺与奪をマレフィセントに握られているのである。自分の意志とか関係なく、全てを女性に支配させられている、まことに羨ましい身分だ。
泉鏡花の『高野聖』を思い出した。

いずれもが、ダメ男であり、弱い男であり、下僕であり、肉奴隷である。
この作品に流れている女尊男卑の思想の強烈さが如実にわかる。この世で真実の愛という崇高なものを獲得できるのは女性だけであり、男はその素晴らしい女性の足元に跪く卑小な生き物である、という思想。それは、ある種のマゾヒストが理想とする考え方であろう。それをここまで徹底的に描いた映画も稀である。

それに何よりもマレフィセント役にアンジェリーナ・ジョリーというまさに適役を得たことが大きい。マゾヒストが思い描く理想の女神さまとしてその貫録といい美貌といい、邪悪さといい申し分ない。思い返せば、アンジョリーナは既に『Mr.アンドMrs.スミス』という映画においてデリヘルならぬデリSMクラブの女王様(実は殺し屋)という役を演じているのでお手の物である。
先に挙げた三人の男もアンジョリーナに比べると小物ぶりが顕著すぎるくらいだ。この映画は、まさにアンジョリーナで持っていると言っても過言じゃない。

どうも女性向け映画として宣伝され過ぎているのが気掛かりである。心あるマゾヒスト男性にこそお勧めしたい映画である。傑作。
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