「不思議のひと触れ」 どんな孤独にもおわりがある

小説(短編集)「不思議のひと触れ」アメリカ シオドア・スタージョン著 大森望編 大森望・白石朗訳 河出書房新社 奇想コレクション 2003年12月30日初版発行 2004年2月28日2刷発行
2014年2月9日(日)読了

短編集。全10編収録。残念ながらどれもこれも面白いとはいかない。面白いのはこのうちの半分くらいか。ま、それでも大したものである。

「高額保険」(1938年)
スタージョンのデビュー作。まるでヘンリー・スレッサーが書きそうな犯罪もののショート・ショート。ユニークなのはいわゆる叙述トリックを使っていること。小説でしかできない、映像化困難な話にしているのが何とも愉快。

「もうひとりのシーリア」(1957年)
傑作。安アパートに住む男の愉しみは、アパートの他の部屋に秘かに忍び込んで赤の他人のプライバシーを探ることだった。別にそれを探り当ててもそれをネタに相手を脅迫するわけでもなければ盗みを働くわけでもない。ただ純粋に趣味なのである。ある日、新しくアパートに越してきた女性の部屋にも当然入り込んで色々と物色していると人間の常識では到底考えられない物を発見する。その女性は人間ではなかったのだ。
女性が人間でないことを知っても別に怖がりもせず、探ろうとも誰かに言おうともせず、不思議な行動に出る男の方が異様でむしろ人間ではない女性の方は悲しみが伝わってくる。

「影よ、影よ、影の国」(1951年)
SFやホラーではよくある「恐るべき子ども」を扱った作品。レイ・ブラッドベリにもこういう作品がいくつかある。
子どもが親が知らない間に秘かに異世界への扉を開けてしまう。ここではそれは影絵の世界というのがいい。遊びを禁じられ、おもちゃを取りあげられた子どもが唯一見出したのが影絵遊びでそれが惨劇につながっていく。ラスト三行がいい。

「裏庭の神様」(1939年)
ファンタジックなドタバタコメディ。男が自宅の庭を掘ったら出てきたのは奇妙な石像。それが突然喋りだして、「自分は神である」と宣言する。そして神様は自分の力を示すため男が嘘のつけない人間にしてしまう。以後、男が口にしたことはどんな突飛なことでも本当のことになる。
今となってはよくある話という以上のものはない。そこそこ面白いのだが、スタージョン独自の味というものはない。

「不思議のひと触れ」(1958年)
傑作。変なこと考えるものである。人魚に恋した男が、待ち合わせ場所に行ったらそこには人魚はいなくて人間の女性がいて、その女性は男の人魚と待ち合わせしていたのだが姿を見せず、人魚にすっぽかされた同志である男女が何故か知らないが恋に落ちる、というスタージョン以外はおそらく書かないような話。ラブストーリーの珍種。でもこれは忘れがたい作品。

「ぶあん・ばっ!」(1948年)
音楽もの。同じ音楽ものでも「マエストロを殺せ」みたいに殺人が起きるわけでもなく何が面白いのかさっぱり分からなかった。

「タンディの物語」(1961年)
これも面白くない。何だか持って回った書き方をしているので物語が全く頭に入ってこない。降参。

「閉所愛好症」(1956年)
これもダメだった。何だか単純な話を回りくどく語っているようで面白いとは思えない。

「雷と薔薇」(1947年)
傑作。米ソ冷戦下での核戦争の恐怖を描いた作品は山ほどあるが、1947年という早い時点でこれを書いていることに驚く。第二次世界大戦終結からまだ2年しか経っていないのにもう人類滅亡ものが出てきているというのも悲しい話。時として難解でとっつきにくいスタージョンだが、これはストレートな語り口で分かりやすく面白い。
ラスト三行が上手い。人類滅亡した後に希望を託すというメッセージに感動する。

「孤独の円盤」(1953年)
傑作。「不思議なひと触れ」では人魚が結果的に男女を結びつけたが、こちらは空飛ぶ円盤が恋のキューピッドになる。スタージョン以外誰も考えつかない、こんな変な話。孤独な女性の前に突然小さな空飛ぶ円盤が現れて話しかけてきた、なんて話。
ラスト二行がいい。

どんな孤独にもおわりがある、いやというほど長いあいだ、いやというほど孤独だった人にとっては。
(326ページより引用)
不思議のひと触れ (シリーズ 奇想コレクション)
河出書房新社
シオドア・スタージョン

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