「奇才ヘンリー・シュガーの物語」 カメを助けた少年はその後どうなったか?

小説(短編集)「奇才ヘンリー・シュガーの物語」1977年 イギリス ロアルド・ダール著 柳瀬尚紀訳 山本容子絵 評論社 ロアルド・ダールコレクション7 
2014年1月25日(土)読了

短編集。短編小説6編とエッセイ2編収録。児童書の体裁ではあるけれど大人が読んでも十分面白い。というか、子どもにはいささか教育上よろしくない作品もあり。まあ、ダールの場合、どの作品も教育上よろしくない部分を含んでいるものなのだが。
個々の作品の感想。

「動物と話のできる少年」
何だかメルヘンチックなタイトルだが、読んでみるとどことなく怖い話。
漁師の網にかかって浜辺まで運ばれてきた大きな海亀。さてみんなでホテルまで引きずっていこうかと大騒ぎしているところに一人の少年が、「放してあげて!」と絶叫する。そして・・・。
「助けた亀につれられて・・・」という「浦島太郎」の現代イギリス版みたいな話。前半部は割と現実的な展開だが、後半は結構突飛で非現実的なところが面白い。心優しい少年と亀とのふれあい、みたいないい話ではあるのだが現代にメルヘンを持ってくると異様な感じになるのがよくわかる。

「ヒッチハイカー」
大人向けの短編集「王女マメーリア」にも収録されていた作品。大人でも子どもでも楽しめるが、これこそ教育上よろしくない作品。勧善懲悪という建前を覆し、犯罪も名人芸に域に達すると素晴らしいみたいなニュアンスがあり、誠に愉快な名作にして傑作。
日本とイギリスで短編ドラマ化されたことあり。そのどちらかは、原作小説のオチのさらにその先を描いていてひどく興醒めだった記憶がある。やはり原作通りの終わり方がベスト。

「ミルデンホールの宝物」
この作品の前に「次の物語の覚え書き」という短いエッセイがあり、作品ができた裏話が記されている。ダールにしては珍しく実話をもとにして関係者に取材して生み出された物語。でもこれもまぎれもなくダール作品。シニカルでダークなユーモアが随所にある。

「白鳥」
傑作、だけどひどく厭な気分にさせられる作品。二人のいじめっ子がひとりの男の子を徹底的にいじめる話。いやもういじめという範疇になく犯罪レベル。こんないじめっ子に目をつけられたら本当に命が危ない。日本じゃ考えられないけれど、誕生日プレゼントにライフルを貰ってそれで他人を脅かし、さらには相手の体に弾丸を撃ち込むことまでやる。イギリス人の子どものいじめは凄すぎる。まあ小説の話なんだけど。ラストは少しファンタジーみたいになってホッとする結末なんだけど、こうでもしないと不快すぎるからなあ。

「奇才ヘンリー・シュガーの物語」
「目を使わずに見る男」という本を読んだ男が、内容に感化されて自分も目を使わずに見る技を身に着ける訓練をしてついに成功する。彼は裏返したカードを透視できるようになったのだ。これでどこのカジノのカード勝負でも全戦先勝間違いなし。彼は行動を開始する。
という話でいかにもダールらしい奇談で実に面白い。大抵こういう話はどこかに落とし穴が会って主人公がそれに嵌るという展開なのだが、これは少し様相が違う。そこがいい。

「思いがけない幸運 いかにして作家になったか」
自伝的エッセイ。学校で体罰を受けた思い出話から始まって、軍隊での戦闘機パイロットを務めたときの話を経てひょんなことから作家になるまでが記されている。そう長いものではないが、ダールという超個性的な作家がどう成長してきたのかがよくわかる。

「楽勝 初短編━1942年」
初めて書いた小説。戦闘機パイロット時代の話を書いたもの。これにものちのダールを彷彿とさせるものがあり興味深い。


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