「ゲド戦記Ⅱ こわれた腕環」 輪廻転生の少女

小説「ゲド戦記Ⅱ こわれた腕環」1971年 アメリカ アーシュラ・K.ル=グウィン著 清水真砂子訳 岩波書店 ソフトカバー版 2006年4月6日第1刷発行
2014年1月2日(木)読了

Ⅰ巻に引き続き、ゲドの活躍を読めると思いきや、最初から一人の少女の人生が描かれる。Ⅰ巻には出てこない全く未知の少女。彼女は、運命のいたずらで大巫女の生まれ変わりとされ、5歳で家族と決別して墓所の巫女の館で暮すようになる。そして、生涯にわたって墓所を守らねばならない定めを負わされる。そんなストーリーがずっと続く、読めども読めどもゲドは出てこない。やっと126ページ目に一人の男がゲドの通り名であるハイタカを名乗る。この小説は全243ページなので半分強を過ぎている。
従ってⅠ巻のような波瀾万丈の冒険譚とはいかない。ゲドが出て来るまでは少女がいかなる人生を経てきたかに終始するし、ゲド登場後もそんなに派手な立ち回りとかはごく少ない。場所も大巫女の館・玉座の神殿・墓所の地下迷宮にほぼ限定されている。玉座の神殿が崩壊して壊滅するくだりは、ポオの「アッシャー家の崩壊」を思わせる。
Ⅰ巻とは、登場人物もストーリー展開もまるで違うが、それでもテーマ的には似ているように思われる。Ⅰ巻は、ゲドの自分探しであり、自分との戦いでもあり、ラストにハッキリ自分に目覚めた自立の物語だった。Ⅱ巻は、否応もなく運命の名のもとに囚われの身となっていた少女がゲドの助けによって自由になり、初めて自分を取り戻す物語。いずれも外敵と戦うことが主眼ではなく、あくまでも自分を発見することが何より大事である、というメッセージを強く感じる。そこがこのシリーズの卓越したところである。

話としてⅠ巻と繋がっているのは、あの印象的な孤島での二人の年老いた兄妹のエピソードである。あれはⅠ巻で終わりかと思っていたのでまさかこういう風になるとは思ってもみなかった。上手い。

キリスト教にはない輪廻転生の考え方が作品に取り入れられているのが興味深い。ゲドを有色人種に設定したりするのもそうだが、ル=グウィンの独自性を強く感じる。
大巫女と呼ばれる存在は、他のものと違って輪廻転生しても別の存在にはならず、常に同じ大巫女として生まれてくる、という発想、これは別に珍しくない。恐らくチベット仏教におけるダライ・ラマをモデルのしていると思われる。
ただ、ゲドによって大巫女の少女が別の地に連れ出されてしまうので、ここで大巫女の継承は断たれることにならないか。結局、輪廻転生を否定しているような・・・。
異教に染まった少女を救出して自分たちの土地で自分たちの宗教を信仰させる、そんな危うさも感じられる。
ル=グウィンがどのような宗教観を持っているか知りたくなった。
ともあれ、このⅡ巻も傑作である。
ゲド戦記 2 こわれた腕環 (ソフトカバー版)
岩波書店
アーシュラ・K. ル・グウィン

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