「國民の創生」 美少女は國の宝である

映画「國民の創生」1915年 アメリカ 製作・監督・脚本:D・W・グリフィス 出演:リリアン・ギッシュ メエ・マーシュ ヘンリー・ウォルソール ミリアム・クーパー モノクロ(一部、二原色カラー)、サイレント(音楽つき)、日本語および英語字幕 上映時間152分
DVDにて鑑賞 「淀川長治 映画の世界 名作DVDコレクション 第40号」収録DVD
2014年1月1日鑑賞

非常に巨大な映画を見た、という印象。既にこの時代からアメリカ映画は怪物的なパワーを持っていたことが分かる。上映時間152分、2時間半という長さにも驚くが、中身もヴォリュームたっぷりで見る者を飽きさせない。久々にたっぷり堪能した。
この映画が描いているのは、戦争、とそれがもたらしたものである。ここで言う戦争とは南北戦争のこと。アメリカを二分して国民同士が殺しあったアメリカ史最大の悲劇である。
まず映画は、戦争前の北部と南部の家族の交流を描く。この平和な二家族が否応もなく戦争に巻き込まれていくという展開はこの手の映画の常套であるが、衒いもなく作ってあるのであまり陳腐には思えなかった。出征した両家の若者が、戦地で敵味方として会いまみえるところなんて、「やってる、やってる」と嬉しくなる。
戦闘シーンの描き方もよく出来ていて中々の迫力で面白い。とにかく人海戦術でエキストラを山ほど用意しているのが、スケールの大きさを感じさせるし、カメラもロングショット、接写などを駆使してきちんと状況を見せている。そこからなんだか南北戦争の実際のドキュメンタリーを見ているかのような臨場感が生まれる。
勿論、南北戦争時(1861年~1865年)にはまだ映画というものは存在していない。写真はあったけど。
塹壕から飛び出した兵士が、待ち構える敵兵の集中砲火に倒れていく残虐さ。敵陣にたどり着いた後は、接近戦で銃剣を使っての殺し合いや殴り合い。その迫力。さすがにアメリカ映画は、こういう殺戮や破壊の描写は世界一である。
映画「風と共に去りぬ」(1939年)の見せ場の一つだったアトランタ炎上がこの映画で既に描かれているのも特筆すべき。さすがに技術的にまだ拙いのでとても「風と共に去りぬ」には及ばないが。
歴史的大事件を描くときにそのただなかに架空の登場人物を絡ませるという手法は珍しくもないが、この映画でもそれをやっている。戦犯となり、処刑が決まった息子のために母親と恋人がリンカーン大統領に恩赦の嘆願に行くというくだりなど、実在した人物との組み合わせが面白い。全くのフィクションか、何かモデルがあるのか。
そのあとのリンカーン暗殺も登場人物たちが居合わせて暗殺を目撃したという展開。このシーンもそうだが、他でも何か所か、シーン前に「忠実に再現している」という字幕が挿入される。要するにきちんと史実を調査研究して作っているんだ、絵空事じゃないんだよという念押しである。それをわざわざ映画の中で強調する映画を初めて見た。大したものである。ここまでが第1部。非常に緻密に作られた作品とここまでは思う。
ところが、第2部になると緻密どころかトンデモ展開になり、まさに絵空事になってしまう。だけどそれはそれで面白いのだから困ってしまう。煽情的活劇として相当高いレベルにある。
第2部は戦後、敗れた南部にやってきた北部の人間と彼らに煽動された黒人たちが南部に無理難題を押し付け、乱暴狼藉を働くのに業を煮やした旧南軍の兵士たちがKKK(クー・クラックス・クラン)を結成、対抗すべく立ち上がるという展開。今でもこの辺りが非常に問題視されている。KKKが英雄的に描かれている、と指弾されている。まあ、言われてもしょうがないかな、という内容ではある。何の権限も持たない民間人の集団が、犯罪を犯した黒人を逮捕して自分たちで裁判を行い、勝手に処刑まで行ってしまう。それでいてラストにいたるも全く罪に問われた形跡がない。現実に存在するKKKをその名前で登場させてやってしまえば、そりゃ、問題になる。でも映画とかフィクションの世界ではこういう存在はよくある。「ワイルド7」とか「ダーティ・ハリー2」とか。
「法で裁けない奴らは俺が(俺たちが)裁く。」とか言っちゃって。
とにかくここに出てくる黒人は付和雷同、品性下劣、無知蒙昧、粗暴で凶悪な輩でまさに力で押さえつけやっつけなければならない存在として描かれている。KKK英雄視よりもこの黒人描写の方がえげつなく問題だろう。今のアメリカ映画では、まず絶対お目にかかれない描写なので非常に興味深かった。
古くから南部の家に召使として勤める黒人たちは善良だ、としているのも姑息な感じ。
この第2部も思想的には問題だろうが、映画的な面白さという点では抜群。さまざまなテクニックを駆使して実に躍動感あふれる映像を見せてくれる。
偏執的黒人に追いかけられた美少女(メエ・マーシュ)が逃げる。彼女を心配した兄が行方を捜す。その両者の行動をカットバックで見せてハラハラドキドキさせる手法は今見ても面白い。果たして兄は美少女の妹を助けることができるのか。
この手法はクライマックスでもっと複雑に盛大に繰り広げられる。見ていて非常に気持ちが高揚する。ここでも別の美少女(リリアン・ギッシュ)が黒人に猿轡(さるぐつわ)をかまされて監禁されている。果たしてKKKは美少女を助けることができるのか。
美少女を辱める奴らは、滅茶苦茶に殺されて当然、という気分が自然にわいてくるところが怖いというか楽しい。
D・W・グリフィスは美少女を愛するが故に美少女が苦悶の表情を浮かべるのも好きなんだろう。
クライマックスは、KKKと黒人兵たちとの市街地での壮絶な銃撃戦、荒野の一軒家に籠城した一家とそれを攻撃する黒人兵たち、そして前述の猿轡の美少女、の三局面がカットバックで描かれる大盤振る舞い。凄く面白い。
というわけで、問題は大いにあろうが、傑作であることは間違いない映画である。

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