「ヒトラーの秘密図書館」 ヒトラーの蔵書から見えてくるもの

ノンフィクション「ヒトラーの秘密図書館」2009年 アメリカ ティモシー・ライバック著 赤根洋子訳 文藝春秋 2010年1月10日第一刷 2010年3月1日第二刷
2013年4月21日(日)読了

アドルフ・ヒトラーの死、およびドイツの敗北による混乱のなか、ヒトラーの膨大な蔵書の大半は行方知れずとなった。だが、それでもいくたりかの本はアメリカとヨーロッパに散逸したと言えども所在が明らかなものもある。それを探しだし、現物に直接あたって、詳細に調査・研究し、考察した本である。

ヒトラーの蔵書に着目した点が、素晴らしい。あのヒトラーがどんな本を所有し、読んでいたか、実に興味があるではないか。今までこういう側面からヒトラーに迫った本を読んだことはない。
もっとも著者は、ヒトラーの蔵書の書名を羅列したりする愚を避けている。ヒトラーの伝記的事実と絡めてこの本を構成しているので実にとっつきやすく読みやすく分かりやすい。

まず最初は1915年、ヒトラーが26歳のときに第一次世界大戦に伍長として従軍したところから。
最前線で戦いながらヒトラーはどんな本を読んでいたかが明かされる。こんなことまで分かるもんなのだな。
ヒトラーが読んでいたのは、「ベルリン」というベルリンの建築史の本で、いかにも建築家を志していたことのあるヒトラーらしい。
死亡率の極めて高い過酷な伝令兵を勤めていた若きヒトラーが戦場で何を思ってこの本を読んでいたのだろう。

もうこのあたりから引き込まれて、あとは一気に読んだ。

ヒトラーの反ユダヤ思想に影響を与えた本の一つが、アメリカ人の自動車王ヘンリー・フォードの「国際ユダヤ人」だったという事実は、決して反ユダヤ思想が、ナチスの専売特許でもなければ、あの時代のドイツが生み出したものでもないことを示している。
さらに同じくアメリカ人マディソン・グラントの手による「偉大なる人種の消滅」というのも紹介されている。
ここで書かれている部分だけでも今読むとまさに狂気の沙汰なのだが、これが通用し、いや支持されていた時代もあったということだ。

また、これは蔵書ではなくヒトラーの著書である「我が闘争」をめぐる話も興味深い。

ヒトラーが所有していた蔵書の半数7000冊が、軍事にかかわるものだった、というのは驚き。しかもそれらの大半を目を通していた形跡がある。
とくに「兵器年鑑」はお気に入りで、毎年、ドイツ語版に加えて比較のため、英語版、フランス語版、ロシア語版も買っていたという。なんという兵器オタクか。

ドイツの冒険小説家カール・マイの小説を愛し、スウェーデンの冒険家スヴェン・ヘディンを尊敬していたヒトラー。

ヒトラーが最後の日々を過ごした地下壕に「ノストラダムスの予言」という本があったというのは、なんともできすぎの話のようだが、実に面白い。もっとも全部読まれた形跡はないようだが。

まだまだ興味深い話はいくつもあり、いろいろ知られざることを教えてもらった。
傑作である。アイデアの勝利と言おうか。




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