「ヨットクラブ」

小説(短編集)「ヨットクラブ」TIME OUT(1968年) アメリカ デイヴィッド・イーリイ著 白須清美訳 晶文社 2003年10月30日初版
2012年12月31日(月)読了

短編集。全15編収録。
帯には、「異色作家短篇集」と書かれてある。早川書房の往年のシリーズを念頭に入れてのものだが、確かにこの本を読んでみると「異色作家」と言いたくなる気持ちに同意したくなる。SFとかミステリとか普通小説とかジャンル分けできない、したくない作品が目につき、江戸川乱歩の言う「奇妙な味」に該当するような読後感を味わえる。久々にこのような作品群を読んで懐かしくもあり、逆に今となっては新鮮にも思えて楽しかった。オチがあったりなかったりというのもメリハリあっていい。
個々の作品についての簡単な感想を書いておく。

「理想の学校」
いわゆる問題児を受け入れる全寮制の学校に息子を入学させるために訪れた男が見たものとは。
映像化が困難なオチがついた作品。「葉桜の季節に君を想うということ」を思い出した。面白い。

「貝殻を集める女」
浜辺で戯れる男と女、そして女の母。
取り立てて何が起きるわけではないが、女というものに絡め取られ支配されようとしている男を描いているように思える。どこか不穏な雰囲気。特にオチがあるわけではない。

「ヨットクラブ」
これは以前アンソロジーで読んだ記憶がある。有名な作品だが、実は今回読んで一番つまらなかった。オチありきの作品だから再読には辛い。

「慈悲の天使」
中年男が初めて出会った中年女にホテルに誘われてホテルに行く話、と聞けばその後は犯罪がらみかと予想が立つがそんなことは全然なくすんなりと終ってしまう。ひねったオチがないところが逆に印象に残る。

「面接」
親会社への昇進を希望する男が面接を受ける。だが、その面接は次第に異様な方向に・・・。
面接官と面接を受ける者二人だけのやり取りで構成された話。何となく不条理演劇みたいなものを思い起こす。
延々と事態がエスカレートしていく面白さ。これも明快なオチはない。その辺も不条理演劇みたい。

「カウントダウン」
火星行きのロケットに仕組まれた恐るべき復讐計画。
ブラックユーモアあふれるオチが気に入った。

「タイムアウト」
この短編集のベスト1。傑作。奇想としか呼びようのないとんでもない話。米ソ冷戦下の世界で原子力事故が発生し、ある国が消滅してしまう。米ソ両国はその事実を隠蔽し、秘かにその国を再生させようとしていた。
核、原発ものSFは数あれどこれは極めてユニーク。唯一、思い出すのは原爆にまつわる途方もない隠蔽工作を描いた「日本核武装計画」(エドウィン・コーリイ)くらいか。この本については、瀬戸川猛資の「夜明けの睡魔」のなかの「奇想の系譜Ⅱ」に詳しい。

「隣人たち」
引っ越してきた夫婦に対して近所の住人達が抱く疑念が膨れ上がっていく。
閉鎖的な小さな社会からはじき出される者の悲劇を描いた作品。佳作。

「G.O’D.の栄光」
自分が神であると確信した男の話。
次第にエスカレートしていく事態の顛末が面白い。

「大佐の災難」
「隣人たち」と同じくご近所トラブルの話。これは大佐という人物の主張のみを描くことにより、彼の異常性を浮かび上がらせる趣向が上手い。

「夜の客」
長い間、険悪な関係に陥っていた夫婦。ある夜、妻の友人がその家を訪れる・・・。
架空の存在を媒介にして相手を傷つける夫婦、というのは「ヴァージニア・ウルフなんてこわくない」(エドワード・オールビー)を思い出す。ただ、この「夜の客」はホラー風にオチがつく。

「ペルーのドリー・マディソン」
これはよくわからなかった。話もわからないし、何を言わんとしているかもわからない。

「夜の音色」
これもわからないし、何が面白いのかもわからない。

「日曜の礼拝がすんでから」
映画「悪の種子」のような「恐るべき子供」を描いているのだが、ラストのひねりが鮮やか。エリザベス・テイラー(女優じゃなく作家の方)の「蠅取り紙」を思い出した。傑作。

「オルガン弾き」
オルガン弾きが遭遇したテクノロジーの脅威。
楽器が暴走するっていうのはマシスンも書いてたと思う。さほど面白くない。



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