「葉桜の季節に君を想うということ」 また騙された

小説(ミステリ)「葉桜の季節に君を想うということ」2003年 歌野晶午著 文藝春秋 2003年3月30日第1刷 2003年12月10日第2刷
2012年11月13日(火)読了

傑作との評判の高い作品だが読むのは初めて。
評判通り実に面白いミステリだった。
作者の仕掛ける叙述トリックが鮮やかに決まっている。
まさか登場人物たちが、◆◆ではなく、■■だとは想像だにしなかった。

すっかり騙されてしまった。その何たる快感。
こういうタイプのミステリは読むのは初めてではない。あれやこれやをすでに読んでいて、さらに本作が叙述トリックがあると事前に知りながらそれでもまったく見抜けなかった。真相を明かされた時の驚きと興奮。我ながらなんという騙され上手。現実世界で騙されるのはまっぴらごめんだが、こういう作り物で騙されるのは大歓迎だ。

昔読んだ「殺人交差点」(フレッド・カサック)の犯人が●●ではなく、▲▲であるという種明かしにびっくりしたことを思い出す。おそらく本作もこれに影響を受けているのではないか。より手の込んだ仕掛けを張り巡らしてはいるので単なる模倣ではないが。

一度読了したあとでもう一度拾い読むして細部を確認してみた。ちょっと無理やりかなあ、という箇所もなきにしもあらずだがそれでも大部分は作者のテクニックに舌を巻く。
ただ、この仕掛け以外のところは案外ありきたりなのがいささか残念。殺人まで犯していく悪徳詐欺集団を巡るストーリーというのが陳腐に思えてならない。こっちの方がもっと面白くなればさらに傑作になったろうに。

作者の歌野晶午という人は律儀で親切なのか巻末で「補遺」として用語解説風に作品の細部を一々指摘してくれている。この趣向も面白いが、ちょっと言いわけにも思えてしまうのが玉に傷。

とにかくただひたすら読者をひっかけることのみを目的としたミステリというのは読んでいて実に気持ちがいい。
またまんまと騙されわけだが、これからもどんどん騙してくれるミステリが読みたい。


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