「白河夜船」 死んだ人、生き残った人

小説(短編集)「白河夜船」1989年 吉本ばなな著 ベネッセ 1989年7月15日第1刷発行 1996年8月15日第18刷発行
2012年11月6日(火)読了

この前、23歳の若い女性と話していたら小説の話題になった。ぼくがその女性にどの作家が好き?と尋ねたら、「吉本ばなな」という答えが返ってきた。そのあと、別の機会に別の場所で知り合った別の23歳の若い女性とやっぱり小説の話題になり、同じことを尋ねたら、「吉本ばななさん」という回答であった。
依然として吉本ばななの人気は高いのだなあ、と感心したのだが、実はぼくは吉本ばななの小説を読んだことがないのであった。立て続けにふたりの女性から吉本ばななの話が出たということは単なる偶然じゃなくて天の啓示に違いない。早速、BOOK・OFFで吉本ばななの小説を買って読んでみた。
ちなみにぼくが買った「白河夜船」にはこの本の前の持ち主らしい人の名刺が挟まっていた。ホームスタイリストという肩書を持つ女性の名刺。ホームスタイリストとは何かがわからなかったのでネットでいろいろ調べてみた。人生いくつになっても勉強だ。
ついでにもうひとつ。この本のタイトル「白河夜船」の意味。

しらかわよふね[白河夜船] 熟睡していて何が起こったか全く知らないこと。しらかわよぶね。[京都を見物して来たとうそを言った者が、名所白河について尋ねられ、川の事だと思い、夜中に船で通ったから知らないと答えた話に基づくという] 「新明解国語辞典第七版(三省堂)」より引用

これも勉強になった。

この「白河夜船」という本は、三つの短編からなっている。「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」である。いずれも別々の登場人物による別々のお話なのではあるが、三つ続けて読むと、作品の色合いが似ていてどれも同じ物語に思えてくる。
著者の吉本ばななもあとがきで
「だから、この3つの話はきょうだいで、ある意味では大きなひとつ話といえるのかもしれません。」(212ページ)
と書いている。

簡単にいうとこの三つは、自分の近しい人を亡くした女性の物語である。
「白河夜船」では大学のころからの親友しおりを亡くした寺子、「夜と夜の旅人」では実の兄芳裕を亡くした芝美、「ある体験」では昔の恋敵である女・春を亡くした私(文ちゃん)が登場する。いろいろと状況や人間関係を変えてきているので、「またか」という感じはしないが、それでもここまで死にこだわる吉本ばななに興味がわいてくる。
話の中身は、不倫だったり、三角関係だったり、売春まがいの行為だったりするのだが、いずれも生々しくなく、どこが現実味がない。「ある体験」なんかは、幻想小説と呼んだ方がいいかもしれない。
そういうところが非常に面白く思った。結構ドラマティックでメロドラマティックな出来事が起きるのにちっとも話が盛り上がらない醒めた感じが気に入った。登場人物もとうてい現実世界の人と思えず、みんな吉本ばななの夢の中の住人みたいなところもいい。

なかなか楽しく読めたので吉本ばななの他の本も読んでみたい。あと、23歳の女性に吉本ばななのどこがいいのか聞いてみたくなった。
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