「おおかみこどもの雨と雪」 長いお別れ

映画(アニメ)「おおかみこどもの雨と雪」2012年 日本 配給:東宝 企画・制作:スタジオ地図 原作・脚本・監督:細田守 脚本:奥寺佐登子 キャラクターデザイン:貞本義行 作画監督:山下高明 声の出演:宮﨑あおい 大沢たかお 菅原文太 黒木華 大野百花 西井幸人 加部亜門 染谷将太 谷村美月 片岡富枝 平岡拓真 麻生久美子 林原めぐみ 中村正 大木民夫 上映時間117分
2012年9月9日(日)鑑賞 TOHOシネマズ西新井スクリーン7 10時10分の回 座席B-5 入場料1300円(前売り券) パンフレット700円

大学生の花という女の子が恋した男の人はおおかみおとこだった!
でも、花はそんなことちっとも気にしないでおおかみおとこを愛していく。
そこがすごくえらいとおもいました。
わたしだったらおそろしくなってしまってすぐにお別れしてしまうのに、花は違った。
愛して結婚してセックスして妊娠してふたりも子どもを産むの。
産むときだって病院もいかないし、助産婦さんも呼ばないでじぶんの力だけで産んでしまう。
これってけっこう危険なことだけど、そうしなくてはいけないワケが花にはあったの。
そう、おおかみおとことの間にできた子どもだから生まれるまでは人間のすがたをしているか、オオカミのすがたをしているかわからないからなの。
もし、おおかみのすがたで生まれたら、それを見たお医者さんやら看護師さんやら助産婦さんやらがビックリするだろうし、そのあとは毎度おなじみの差別と迫害、憎悪と偏見のフルコースになるだろうから。
花が自力で産む、となったあたりでわたしはわかった。このアニメってホラーなんだってことが。なんとなく予告編とか宣伝とかで、「母と子のほのぼのアニメ」かな、とおもいこんでいたのをひっくり返されちゃった。
このあとでおおかみおとこが死んじゃうんだけど(ネタバレごめんね)、そのへんも意味不明で不条理でよくわからない。まあ、花もわからないようなので見ているわたしがわからないのも無理ないか。
花はとうぜんシングルマザーになるのだけど、ふたりのこども(姉と弟)はおおかみおとこと人間のハーフで人間になったりおおかみになったりできる体質をもっていてそれがけっこう大変なことが多いの。
花はいろんな面倒を避けるため外の人たちと付き合わないようにするのだけど、逆にそれがまわりに疑われて、児童虐待、ネグレスト扱いで児童相談所の人たちがやってきたりもする。
このへんもこわいなあ、とおもった。いまの社会でグリム童話みたいなファンタジーはできないということかしら。ファンタジーとリアルがまじりあってる、というのがこのアニメのおもしろいところなんでしょうね。
病気になったこどもを病院につれて行こうとした花が、どうぶつびょういんにしようかしら、それとも小児科にしようかしら、とまようところはふつうだとギャグなんだけど、ここではちっとも笑えなくてこわい。

そんなこんなで都会に暮らしに閉塞感を感じていた花が、どこだかよくわからないけれど、とにかくうーんと田舎に引っ越す、というふうに話が進むと、ああ、なんか毎度おなじみの展開、と思ってしまった私は心が汚れているのでしょうか。田舎のいかにも頑固そうなおじいさんが出てくると、この人ツンデレだな、と思ってしまった私は心がひねくれているのでしょうか。

いかにも予定調和の話の展開なのは確かなのだが、それでもこの田舎暮らしの話が心ウキウキして楽しいのはアニメとしてよくできているからだ。豊かな自然の中で遊び戯れるおおかみこどもの雨と雪、そしてその母親の花の姿は感動的だ。いかにもアニメらしい躍動感がある。

そんな自然の中で無邪気に開放的になっていた姉の雪と弟の雨の心に変化が表れてくる、というのが後半の展開で幼年期から少年少女になっていく微妙な年頃の微妙な心情がよく描かれている。
それに加えてこの姉弟は、人間ではなくおおかみこどもなのだから普通の人間は味わうことのない試練に直面しなければならない。
「人間として生きるのか、おおかみとして生きるのか」
を選択しなければいけない。まさに究極の選択だが、姉と弟はそれぞれ全く違う選択をする。そこに至るまでの紆余曲折が実に繊細に作られていて素晴らしい。
特に姉の雪が自分の秘密を告白する際の教室のカーテンを巧みに使ったシーンは、名場面として長く記憶に残るであろう。

いちばん終わりまで見たら、やっぱりこれはホラーだな、と思いました。あんなに花が愛したこどもがなんで花から別れて山に行ってしまうのかよくわかりませんでした。花があんなに呼びかけたのに無視ってひどくないですか。こどもは親の愛を忘れておおかみになってしまったのでしょうか。それではあまりにかなしいな。けっきょく花は人間だし、こどもは人間ではないということですか。この前見た「猿の惑星ジェネシス」という映画を思い出しました。あと、太宰治という人が書いた「魚服記」という話も思い出しました。女の子が魚に変身しちゃう話です。

ぜんたいてきにこわいところが多いアニメでしたが、母と子がわかれるところは悲しかったし、ふたりがおおかみになってはしるシーンはワクワクしました。じどうそうだんじょの人とキジはちょっと気の毒かな。
花の本棚に大島弓子さんの「綿の国星」があったのにはわらいました。おまーじゅというやつですか。
雨と雪があれからどうなったか知りたいので何年後かにつづきをつくってください。
わたしはいま、54さいなのでせめて60さいになる前に見てみたいです。
あともうひとこと、このアニメはめいさくです。


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